08:恐怖の対象 ページ18
・
生得領域の中に取り込まれてしまってから何分、何時間かもしれないけど、どれくらい時間が経ったのか全く分からない。
変態を遂げたばかりだからか、まだ未完成の領域なのに野薔薇ちゃんはどこかに飲み込まれて、虎杖くんは左手を吹っ飛ばされた。状況的には絶体絶命。
「Aも!早く伏黒の後追いかけろって!」
「私が外に出たらフェロモンに充てられた呪霊まで外に出ちゃう!ここの施設以外に被害が拡大するのだけは防がないと……!」
伏黒くんは何か察してたみたいだけど虎杖くんにはまだバレてない。
触れた瞬間フェロモンで懐柔できればいいけど呪霊の攻撃が早ければ私の手も虎杖くんみたいに吹っ飛ぶ。命を捨てるような行為だ。
それでもこれ以上虎杖くんがボロボロになる前に気を引いておく必要がある。
震える手に呪力を込めながら最大出力でフェロモンを呪霊へと届ける。その匂いに気付いたのか、呪霊は視線を虎杖くんから私に変えて一気に飛びかかってきた。
想像の何倍よりも早い動きで近づいてきた呪霊に殴られて骨が軋む音が耳に入る。最悪折れちゃったかも、なんて思いながらパンダ先輩に特訓してもらった要領で受け身を取って立ち上がった瞬間、いつの間にか目の前に移動していた呪霊に思い切り頭を殴られた。
「A……!」
「い、たどり……くん……」
私よりもボロボロになった虎杖くんの姿が徐々に霞んでいく。
今までずっとポジティブな面しか見てこなかった虎杖くんの内にあるネガティブな部分が虎杖くんの口からどんどん零れていく。が、頭に入ってこない。
ドクドクと血が流れていく頭で考えられることは”1年全員の安否”と”呪霊の懐柔”で。視界の隅に映る呪霊に手を伸ばして最大限のフェロモンを流し込む。
死への恐怖、皆を危険にさらした呪霊への怒り、嫌がらせをしてくる上層部、色々な負の感情が溢れていつもより呪力が大きくなっていたせいか、流し込んだフェロモンが呪霊に効いた。
「……え、」
「お前……何連れ去ろうとしてんだよ……!」
フェロモンに充てられて私を連れ去ろうと担ぎ上げた呪霊に殴りかかった虎杖くんの拳を呪霊が軽々止めた時、遠くで犬の遠吠えが聞こえた。
それを聞いて伏黒くんと野薔薇ちゃんが安全なことが分かって涙が零れる。
今すぐ逃げ出そう、そう思って虎杖くんの方を向いた時、虎杖くんと宿儺の意識が入れ替わって今まで感じたことのない恐怖を感じた。
3317人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「呪術廻戦」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:もも | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/Momo_UxxU_
作成日時:2021年2月2日 19時