Freiheit IV (ページ8)

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いつまでたっても倒せないα軍に、Δも腹を煮えたのか。あるいはそういう命令を下されたのか。
佐久間を庇うように戦う目黒の目に飛び込んできたのは、片手に小型の爆弾を抱えた敵兵だった。
目黒｢佐久間くん！待避！ここ爆破するつもりだ！｣
佐久間｢めめ！｣
丁度L字になっていた廊下の奥に、突き飛ばされる。
目黒｢佐久間くん！？｣
驚きで叫んだ目黒の声は爆風と爆音にかき消された。

岩本『こちら近接班岩本！今の音何！？』
目黒｢…っ、こちら遊撃班目黒、廊下が爆破された！佐久間くんが巻き込まれた！｣
岩本『…は、さっき｢身代わり｣倒されたって言ってたよな…？』
目黒｢う、うん…｣
岩本『阿部！どうする！』
しかし、少し待ってみても無線から阿部の声が聞こえてこない。
岩本『おい阿部！』

阿部『………佐久間が、』
ワンテンポ置いて聞こえてきた阿部の声は、とてもか細く震えたような声であった。
目黒｢あべちゃん…？｣
阿部『…佐久間が、｢落ちてきた｣ん、だけど…』
目黒｢……落ち、てきた…？｣
記憶が正しければ、阿部は要塞の外にいたはずである。指揮本部はもう少し外野に出たところだが、阿部は阿部で現場で戦おうとしていたのだろう。それに関してはいい。

…目黒と佐久間がいたのは、3階である。
黒煙が少し晴れて、目をこらすとL字型の廊下の、丁度直角になるところの窓が、割れていた。
きっと爆発の時にガラス諸共吹き飛んだのだろう。
向井｢めめ！｣
奥から近接班2人が来た声がした。
しかしその声など、耳に入らなかった。
どうか嘘であって欲しい、そう願いながら窓の外を覗き込んだ。

地面の茶色が不自然に色濃く染まっている場所があった。
まだ煙たい、視界が悪いはずなのに、見慣れた戦闘時の軍用服と、明るい茶髪がよく見えた。
そこに、何も言えずに呆然と立ち尽くす見慣れた黒軍服の現場指揮官も、ハッキリと見えてしまった。

爆風に巻き込まれ、ガラス窓ごと墜落したのだ。
ただの真っ黒な塊になっている人だったものが廊下に散らばっていたから、今思えばまだ幸福だったのかもしれない。
けれども、そこにいたS隊全員が、ただ凍りついたようにその場に立ち尽くしていた。