宝物×宝物＝ part２ (ページ10)

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シルクside　想い、重いページ10

歩けば３分だが、走れば１分半だ。

すぐにあいつの家が見えてきて、意思とは関係なく俺の顔がほころぶ。

慌てて周囲を見渡し、誰もいないことを確認して、１人安堵のため息をついた。

Aの部屋のドア見えるかなーなんて懲りずに考えていると、あるものを目にした。

俺の足はどんどん減速していき

そして

止まった。

シルク「こんぺい……………？」

小さく呟いたその言葉は、夜中の空気に融けて消えた。

シルク「なんであいつが…武田優と抱き合ってんだよ…」

小柄なAに背の高い優。

俺の見ることのできない、高い世界を見ているやつに、Aを取られた。

いや違う、もともと俺のものではなかった。

更に、Aがどこか嬉しそうなのは、俺の視力が落ちただけだろうか。

どうしようもない、憎悪とも取れる感情に、俺は今すぐ叫んでしまいたかった。

そんな心の状態であるにも関わらず、声をかけることもできなかった俺は、気付かれる前にその場を立ち去った。

俺は先程見た光景を忘れるように、ひたすらに走った。

マサイ家に帰りたくない。

帰ったら、一体どんな顔をすれば良いだろう？

明日からもきっと、Aは俺の気持ちなんかこれっぽっちも知らずに、何事も無かったかのように振る舞うだろう。

そんなとき俺は、一体、

どうすれば？

先の事なんて考えたくない。

つい数十秒前の事も考えたくない。

本当に、俺はどうしたらいい？

どれだけ走っただろう。

俺は近くの公園のベンチに、ただただ座っていた。

ぼーっとした頭でスマホを見ると、液晶画面にはAM3:29と記されている。

あまり帰らないと、さすがにマサイが心配するかもしれない。

シルク「…帰るか」

重い足を動かして、マサイ家への家路についた。

俺の野生の勘は、本当に当たる。