この薄汚れた世界の中で

#15 本当は(小野side) ページ36

間島｢おまたせ｣
俺らがアジトに着いて10分｡
Aちゃんを乗せた車が到着した


菅沼｢ね､Aちゃんは?!｣
間島｢落ち着いてｗ大丈夫だから｣
立花｢……｡｣

まじーが苦笑しながら後部座席のドアを開ける｡
そこには

近藤｢え､何で…?｣
菅沼｢どういう事?｣

Aちゃんをお姫様抱っこしながら､
車を降りる潤の姿｡
しかもAちゃんは安元の白衣を羽織り､
その上から潤のジャケットを掛けていた｡
目尻には涙の跡も残っていて｡


日野｢……ねぇ､本当に大丈夫なの?｣
福山｢島田は始末した｣
表情を一つも変えず､淡々と返す潤｡




違う､違うよ｡そうじゃない｡
日野くんが聞いてるのは＿＿＿＿




福山｢……勿論､A"自身"も大丈夫だから｡
立花のおかげで｣
タチを見ると､何か言いたげに潤を睨みつけていた｡
日野｢どうして潤くんと帰って来てるの?慎ちゃんは?｣
福山｢諸事情｣
日野｢ふぅん……｣
それだけ言うと､足早にアジトへ入ろうとする｡

潤とすれ違う瞬間､ふわりと鼻を掠めた匂い｡



俺だって一応男だし､それなりに経験はあるつもり｡というか､ある｡
だから､そのどこか粘ついていて鼻につく匂いには覚えがあった｡男女が致す時の特有の匂い｡

Aちゃんの服装といい､潤の態度といい､
そう確信する位の証拠は揃っていた｡



通り過ぎる直前に潤の腕を掴み､
｢ねぇ､潤だよね?｣
その瞬間､彼の動きがピタリと止まる｡


福山｢……何が?｣
｢Aちゃんの相手､島田じゃなくて潤だよね?｣
菅沼｢え､ちょっと小野くん何言って｣
近藤｢そうだよ大ちゃん､どうしたの｣
福山｢ちょっと何言ってるのか分かんない｣
そう言った潤は酷く冷めた目をしていた｡


｢いや､でも｣
立花｢……潤､いい加減吐けよ｣
日野｢ちょっ､慎ちゃん｣

先程から黙り込んでいたタチが潤に詰め寄り､
胸ぐらに手を伸ばす｡





福山｢触るな!!!!!｣






近藤｢潤くん?｣
福山｢あ……ごめん､言い過ぎた｡
Aが目を覚ましたらちゃんと説明するから｡頼むから今だけは……2人にさせて｣


その声は今にも折れそうなくらい弱々しくて､
｢分かった｣
ただ､そう返す事しか出来なかった｡









この時､既に俺達の日常が崩れ始めていた事も知らずに｡

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