[Elext City] Ⅱ (ページ34)

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本当に、可哀想だよねぇ。
この素晴らしき電脳世界にこーんな裏があるなんてさ。
…本当、可哀想だよね。

だだっ広い部屋で、その部屋の主は1人他人事のように呟いていた。
いいや、実際自分からすれば他人事なのだ。
だから自分から出てくるのは「可哀想」なんていう棒読みの同情の言葉しかない。

あぁ、本当に可哀想だね。
あの綺麗な景色も、本物のように感じる味覚も、全部全部1人の犠牲の元に成立しているみたいだ。
こんな中途半端に残されて。
それは嫌なんだろう？幼馴染みとして。
だから君はこの世界に「嫌がらせ」をし続けているんだ。
「…ははっ」
とても面白い。良かったじゃない、そこまで思ってくれている人がいて。

バグを捕まえる方法なんて簡単だ。
見つける事も、自分の力だと可能だ。
でも残念ながら、自分があの人型を捕まえるのはとても面白くない。
別の誰か、関係性の深い「誰か」が捕まえるのが、とても素晴らしい筋書きだろう。
ならば、自分はお膳立てをすればいいだけ。

「さ、楽しませてよ」
コードを繋ぎ、もう1日の大半の時間を占めている電脳世界へと「DIVE」する。
《俺は退屈なんだ》
だからきっかけを与えてあげる。そうすれば君は動くでしょう？「大好きな先輩」の為に。

《本当、手の込んだ事をするよねぇ》
さて、引き金は引いた。引いてあげた。だから後は、観客として見守るだけだ。
《どうかこの退屈で退屈で仕方のない高等遊民を、楽しませてくれよ》
少しおどけたように言うと、男は――kochiは、クスリと笑った。