[Elext City] Ⅱ (ページ3)

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朝から慌ただしいシステム開発部…いいや、Starlights社全体か、どちらにせよバグの対応に追われていた社内は、全体的にピリピリとした空気が漂っていた。
問い合わせが相次ぐ中、聞けば大規模な障害が発生しているのだと言う。

阿部「アカウントがBANされている被害と、文字化けの被害が甚大みたいだね。何人かは乗っ取りも起こっているみたい」
ラウール「乗っ取りって…この前のシャットダウンの時にあった感じのやつですか？」
阿部「うん、恐らくね。北斗、NPCのバグは」
松村「今のところこの一連の流れに関係するバグはありません」
阿部「…そう」

松村に向けられた少しだけ懐疑的な視線に疑問を抱きつつも、ラウールは言われた通り文字化けが起こる不具合の対処を進めていた。
この前提出した人型のバグについての報告書を見た阿部は「ありがとう、後はこっちでやっておくね」とだけ言って次の仕事を割り振った。
逃がした事について問い詰める事もなく、ラウールは逆にその無言の優しさに少しだけ怖くなってしまった。
ただ、「もう情報は大丈夫だから」と言われた言葉は少しだけ怒っていたような気がした。

もしやこの今起こっている大規模なバグも自分があの時あの人型を逃がしてしまったからではないのだろうか？
…されど、バグが消える瞬間に見たあの「悲しそうな顔」が忘れられないのも、また事実で。

阿部「ラウール」
ラウール「はい！」
阿部「康二のとこ行って問い合わせの報告貰ってきて」
ラウール「わかりました、選別されたものですか？全部ですか？」
阿部「全部」

ラウールがパタパタと部屋を出て行ったのを音で感じながら、阿部はパソコンに向き直ると人型を探す為に手を動かす。
何をするかわかっているのだろう、松村がこちらを見ていた。