運命259＃ 笑いもの ページ45
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目標に狙いを定めて、じっと息を止める瞬間が好きだ。ファインダー越しに眺める無機物から、いのちの鼓動を感じる瞬間を見るのが好きだ。それまで疲れ果てていたのに、一切れのパンを手にして輝いた少年の黒い瞳が好きだ。
貧困の街でも、住民は互いに助け合い、寄り添い合いながら生活を守っている。そして、彼らが普段目にする日常の一部が何物にも代えがたい宝石であることを、Aは自分のカメラで伝えたい。
その時、ふとAの横を少年がすり抜けた。
Aはその少年の腕を簡単に捕まえる。
「な」
驚いた様子の少年の腕を引いて反対側のポケットに突っ込まれた手を抜き取る。そこにはAの旅費が入った財布が捩じ込まれていた。
唇を噛む少年の頭をポンと撫でる。
「もうすんなよ、こんなこと」
「〜〜〜っ……！」
ばしっ。手を払い落とされる。
「なんだよさっきから！ お前なんかに俺たちの気持ちが分かるもんかっ。こんな痩せっぽちの街を撮って満足かよ？ 笑いものにしてるんだろ！？」
「……」
Aは少年の痩せた腕を軽く引いて、地面に座り込んだ足の中に座らせた。一連の流れがあまりにも手馴れていて無駄がなかったため、少年は為す術なくAの足元にしゃがみ込む。
「よく見ろよ」
Aがこの街で撮った写真を一枚ずつ見せてやると、彼の目はそれに釘付けになった。
額の汗を拭いながら笑顔を浮かべる女性。一つのパンを半分に割り、大きいほうを弟に分けてやる兄の表情。崩れかけの家の前で、満面の笑みで話す二人組。
「な。笑いものになんかするわけねえだろ」
「……」
黙って俯いてしまった少年に苦笑して、Aは立ち上がった。同時にピョンと立って駆け出そうとした少年の腕を再び掴む。
ビクリと足を止めた彼の手を引きながら歩いた。
「け、警察に突き出す気か！？」
「……あーそーだな」
「待ってよ！ 出来心だったんだ、もうしないっ」
嘘をつけ。やり慣れている手先だったろうが。
と、思いながらも、Aは振り返って少年の前に屈んだ。
「ほんとにもうしねえ？」
何度も頷く彼に失笑。
「じゃ、ごほうびだ」
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棗(プロフ) - 絶対読みます‼️✨️✨ (2023年4月9日 14時) (
レス) id: 20492549c0 (このIDを非表示/違反報告)
杳覇(プロフ) - 棗さん» 棗さん！ 拙作のお気に入り登録通知にいつも元気をもらっています。お読み頂きありがとうございました。次回作ができあがりましたらぜひまた読んでいただけると嬉しいです…！ (2023年4月9日 13時) (レス) id: 1cd5a8a31d (このIDを非表示/違反報告)
棗(プロフ) - 鬼道有人大好きなんで見るのがすごく楽しみでした‼️これからも読ませて頂きますm(*_ _)m (2023年4月9日 13時) (レス) @page48 id: 20492549c0 (このIDを非表示/違反報告)
杳覇(プロフ) - 初見朧さん» そうです最終章…の予定…です〜！！ そう、私も凄いあっという間だった気がする……。わ〜！ ほのぼの目指してたのでそう伝わってて大変嬉しいです❤️ 頑張るね、ありがとう！！ (2022年3月11日 12時) (レス) id: 1cd5a8a31d (このIDを非表示/違反報告)
初見朧(プロフ) - fin…fin！？終わり！？そっか、夙夜夢寐もここまで来たんだね。なんか早い気がする(天空の巫女読み返してるからかな)前作は恋愛要素が多くて、読んでてほっこり？ほんわか？なんて言うんだ？そんな気分になりました。最後まで頑張ってね！ (2022年3月11日 9時) (レス) @page1 id: 0165dfb280 (このIDを非表示/違反報告)
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