運命257＃ 琥珀 ページ43
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Aが顔を上げると、鬼道もちょうどAを見下ろしていた。彼の背後に輝くシャンデリア。笑みの揺蕩う彼の赤い瞳に見つめられ、じわじわと頬が熱くなる。
「お、おおおおま、聞いてねえぞ！」
「言ってないからな」
「そういうのは普通もっとムードのある時にだな……」
「嫌か？」
あわあわと腕を意味もなく動かしていたAの手が止まる。
鬼道がポケットから取り出したリングケース。開かれた中で光を放っていた琥珀の指輪に、ぐっと息を飲み込む。
「A」
「……ぃ、嫌じゃ、ねえ……」
耳朶まで赤く染まったAに、鬼道がふっと笑った。
彼の長い指先がAの左手を救い取る。一瞬びくんと震えたが、その手は彼の手に従って動いた。指輪が薬指にはめられる。
その時、しんと静まり返った二人の耳元に響いた失笑。
「あ、あたしの誕生日パーティーで婚約しちゃうなんて、流石は有人だ！」
「あ、と、塔子っ、悪い……！」
主役をそっちのけで、二人だけの世界に入ってしまっていた。
Aが慌てて眉を下げながら取り繕おうと口を開いたり閉じたり。そんな彼女を見て、お腹を押さえながらひとしきり笑った塔子は笑いすぎて滲んだ涙を拭いながら言った。
「あー、おかしい。いいね、そっちがその気なら」
息を深く吸い込んで、パーティー会場に声を響かせる。
「みんなー！ あたしの誕生日パーティーはここでお開き！ 今からは、鬼道有人と蓮水Aの婚約祝いだ！」
人々はざわめき、奥のほうでは誰かがポワレを皿に落としていた。見なくてもわかる、鬼道の父だ。
呆然としていた二人に、塔子からの高らかな拍手が送られる。戸惑っていた客たちも彼女にならって手を叩き始めた。
鬼道が苦笑する。
「悪かった、塔子」
「良いって、あたしにはこのほうが合ってるよ」
ギュッ。Aは手を握られて、鬼道を見た。
握られた自分の手に冷たい金属の感触。指輪独特の存在感。
「A、聞いてくれ。俺は二ヶ月後、イタリアリーグに向けて旅立つ」
「……うん」
それは、事前に聞いていた。
「お前とは、また離れ離れになってしまう」
「…………うん」
間が開いていく返事に、鬼道は彼女を抱き寄せた。
「こうは、してやれない。だが忘れるな。俺はいつだってお前を想っている」
「……いつも？」
「ああ。寝ても覚めても」
鬼道の温もりに包まれながら、Aは腕をそっと彼の背中に回した。
「……うん。あたしも。あたしもずっと、有人のことを想ってる」
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棗(プロフ) - 絶対読みます‼️✨️✨ (2023年4月9日 14時) (
レス) id: 20492549c0 (このIDを非表示/違反報告)
杳覇(プロフ) - 棗さん» 棗さん！ 拙作のお気に入り登録通知にいつも元気をもらっています。お読み頂きありがとうございました。次回作ができあがりましたらぜひまた読んでいただけると嬉しいです…！ (2023年4月9日 13時) (レス) id: 1cd5a8a31d (このIDを非表示/違反報告)
棗(プロフ) - 鬼道有人大好きなんで見るのがすごく楽しみでした‼️これからも読ませて頂きますm(*_ _)m (2023年4月9日 13時) (レス) @page48 id: 20492549c0 (このIDを非表示/違反報告)
杳覇(プロフ) - 初見朧さん» そうです最終章…の予定…です〜！！ そう、私も凄いあっという間だった気がする……。わ〜！ ほのぼの目指してたのでそう伝わってて大変嬉しいです❤️ 頑張るね、ありがとう！！ (2022年3月11日 12時) (レス) id: 1cd5a8a31d (このIDを非表示/違反報告)
初見朧(プロフ) - fin…fin！？終わり！？そっか、夙夜夢寐もここまで来たんだね。なんか早い気がする(天空の巫女読み返してるからかな)前作は恋愛要素が多くて、読んでてほっこり？ほんわか？なんて言うんだ？そんな気分になりました。最後まで頑張ってね！ (2022年3月11日 9時) (レス) @page1 id: 0165dfb280 (このIDを非表示/違反報告)
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