運命243＃ 怒りの理由 ページ28
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歩きながら落ち着かせようと引っ張ってきた鉄塔広場には初夏の風が吹き始めていた。
着く頃には呼吸も整い落ち着いて話せるようになっていたAはポツポツと事のあらましを語ったが、それでも鬼道に無視されてしまったショックから要領を得ず、風丸たちが何とか理解できたのは事細かに全てを白状させたあとだった。
「あー、そりゃまあ……」
「鬼道も怒るだろうな……」
ウッ、と喉を詰まらせたAが、涙目だった顔を弾けるように上げた。
「わ、わーってんだよそんなことぉ！」
あの日はそれっきりで、鬼道に無視されたという事実だけが重くのしかかり、再び無視されることの恐怖から、鬼道に声をかけられずにいる。
寝室も同じ。Aが恐る恐る部屋に入ったときには既に鬼道はベッドに横たわっていた。Aに背を向けるようにして。
深い意味は無いのかもしれないが、それが拒絶にしか見えなくて、Aは彼の名を呼ぶのを諦め、自分のベッドに寝転がった。
翌朝、メイドが起こしにきて目を覚ました時、もう鬼道はいなかった。
いつもなら、自分が起きたときにそっとAのベッドへ腰かけ、優しく揺り起こしてくれるのに。とろんと微睡みながら目を開けたAに、頬笑みを浮かべて「おはよう」と言ってくれるのに。
「……すぐ近くにいるんだ。手を伸ばせば、触れる距離にいるのに……イナズマジャパンにいたときより、もっとずっと寂しい……」
座っていたベンチで膝を抱え込む。
円堂は風丸顔を見合わせると、やれやれ、というように肩を竦ませて、Aの前にしゃがみ込んだ。
「Aさ、日本に帰ってきて、一番最初にお前が言ったこと、覚えてるか？」
Aが顔から膝を出す。円堂は口角を上げて、あの時の彼女の言葉をなぞった。
「『鬼道と同じ高校に入る』」
「！」
「あれさ、鬼道、すげー嬉しかったんだと思うんだよな」
見開かれる琥珀を見て立ち上がると、隣にいた風丸が腕を組みながら続ける。
「帝国は生半可な努力じゃ入れない。けど、それまでは他人を助けるためだけに生きてきたお前が人生を自分のために使うことを宣言した。鬼道は他の何を犠牲にしても、絶対に叶えてやりたいと思っただろうな」
「……あたし……っ」
唇を噛んだ彼女に右手を差し出す。
握り締められた拳が開かれて、やがて円堂の手を取った。しっかりと掴まえて、腕を引いて立ち上がらせる。
「心は決まったみたいだな」
「……ああ」
親指でピッと涙を拭ったAの表情は、まるでスペイン戦の後のよう。
「ありがとう、二人とも。あたし、頑張る」
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棗(プロフ) - 絶対読みます‼️✨️✨ (2023年4月9日 14時) (
レス) id: 20492549c0 (このIDを非表示/違反報告)
杳覇(プロフ) - 棗さん» 棗さん！ 拙作のお気に入り登録通知にいつも元気をもらっています。お読み頂きありがとうございました。次回作ができあがりましたらぜひまた読んでいただけると嬉しいです…！ (2023年4月9日 13時) (レス) id: 1cd5a8a31d (このIDを非表示/違反報告)
棗(プロフ) - 鬼道有人大好きなんで見るのがすごく楽しみでした‼️これからも読ませて頂きますm(*_ _)m (2023年4月9日 13時) (レス) @page48 id: 20492549c0 (このIDを非表示/違反報告)
杳覇(プロフ) - 初見朧さん» そうです最終章…の予定…です〜！！ そう、私も凄いあっという間だった気がする……。わ〜！ ほのぼの目指してたのでそう伝わってて大変嬉しいです❤️ 頑張るね、ありがとう！！ (2022年3月11日 12時) (レス) id: 1cd5a8a31d (このIDを非表示/違反報告)
初見朧(プロフ) - fin…fin！？終わり！？そっか、夙夜夢寐もここまで来たんだね。なんか早い気がする(天空の巫女読み返してるからかな)前作は恋愛要素が多くて、読んでてほっこり？ほんわか？なんて言うんだ？そんな気分になりました。最後まで頑張ってね！ (2022年3月11日 9時) (レス) @page1 id: 0165dfb280 (このIDを非表示/違反報告)
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