秋18＃ 天と企み ページ20
.
そして、時は流れる。
冷たく、しんと静まり返った帝国学園。影山の部屋へ向かいながら、鬼道は一人呟いた。
「心待ちにしていた円堂や豪炎寺のいる雷門との対決……こんな気持ちで試合に向かうことになるとは……」
優れた司令塔というものは、試合の前に勝っているものだ。
敗北は醜いぞ。勝つことにこそ価値がある。そう、彼は鬼道に言った。
鬼道はこの人の考え方に惹かれた。影山についていけば、サッカーを極められると思ったためだ。しかし……今は、その影山が信じられない。
「何の用だ、鬼道」
部屋に入ると、影山は画面を見つめたまま問うた。
「俺は正々堂々戦いたいのです。何も仕組んでいませんよね？」
「今まで通り、私に従えばいい」
……やはり、信用し難い言葉だった。奥歯を噛む。更に問いただそうと口を開いた。
「失礼致します」
「！」
そこへ、Aが現れる。
「有人様、そろそろ……」
「……分かった」
「──天に唾しても自分にかかるだけだ」
「……」
踵を返す鬼道に、影山が放ったのはそれだけだった。
.
「……申し訳ございません。タイミングを、誤りましたでしょうか」
影山の部屋を出て声が聞こえないところまで歩くと、鬼道の三歩後ろについていたAは俯きがちにそう尋ねた。
鬼道は振り返り、いや、と答える。
「あのまま尋ねていても、総帥は答えて下さらなかっただろう。……それより、総帥のあの言葉」
「『天に唾』、ですか」
「ああ。気にかかる……ついてきてくれるか」
ふわりと翻る赤いマントを目に留めながら、Aは言った。
有人様の赴くままに。
.
雷門用のロッカールームには、Aの感覚を駆使しても何も見つからなかった。外に出た時に雷門イレブンと鉢合わせたのは誤算だったが、鬼道は告げないことを決め込んだようで、Aもそれに従う。
二人は次に、決勝を戦うスタジアムに来た。しゃがみ込んだAが少量の芝をつまみ上げ、いつもより入念に触れたり匂いを嗅いだりしている。
「どうだ、芝の様子は」
「……何も、変わったところはございません」
「……他の場所か」
行くぞ。出口に向かって歩き始めた鬼道に続いて、Aが立ち上がりかけたその時。
小さな足音が聞こえて、Aは振り返った。
「──何を企んでいるの！？」
「「！」」
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 73人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「イナズマイレブン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
杳覇(プロフ) - に近い感じかな……？ 私の作品の中ではかなり短くまとまると思うんで、暇なときに覗いてくれると嬉しいです！ 更新がんばるね〜〜！！ (2021年10月8日 12時) (
レス) id: 7468c0248e (このIDを非表示/違反報告)
杳覇(プロフ) - 初見朧さん» 初見朧ありがとう〜〜！！ バチくそに頭良い子なので私に書き切れるかどうかは賭けです🙂 選手に指示を出してゲームを組み立てていく司令塔よりはマネジメントに近い役割だけど、そういう認識でも大丈夫です！ フィールドメイキングするスタッフ (2021年10月8日 12時) (レス) id: 7468c0248e (このIDを非表示/違反報告)
初見朧(プロフ) - あっどちらかと言うと日常の練習での司令塔という感じっぽいね(↓設定までしか読んでなかった) (2021年10月8日 11時) (レス) @page6 id: 2897e279c0 (このIDを非表示/違反報告)
初見朧(プロフ) - 遅れました！！わー作ってから一週間経ってるー(棒読み)頭良さげな子だね！(語彙力はテストで溶けました)選手じゃないっぽい？司令塔の補佐みたいな感じかな？楽しみにしてるね！頑張って！！ (2021年10月8日 11時) (レス) @page2 id: 2897e279c0 (このIDを非表示/違反報告)
杳覇(プロフ) - 白雪林檎さん» コメントありがとうございます✨ わ〜〜昔から読んで下さってるんですね！ めっちゃ嬉しいです…！！ ありがとうございます☺️💓 お褒めのお言葉も光栄です✨ 更新頑張ります！！ (2021年10月7日 6時) (レス) id: 1cd5a8a31d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
