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「悪かった」
リビングで冷えた体を温めたAが一息ついたのを見計らって間髪入れずに頭を下げる。息を呑む音が聞こえて顔を上げると、少し不満げにむくれている
こっちにだってプライドあるんだからまだ許さん。眼差しがそう物語っていた。なんて分かりやすいやつなんだろう
「何に？」
「…Aが居るのに知らん女を褒めて、すまんかった」
「…そうじゃない」
「は？」
「そうだけど…そうじゃないの…」
なんだ、それ。俺はまた必死に脳を探った。あの女優が登場したとき、俺は何を思ったのか。綺麗。それを口に出して、その時は…画面を見ていたからこいつの顔は見ていなかったな。声音は？…こいつも何も言わなかったな
腕を組んで黙りこくり、それでも何も思い出せず、観念したようにAの顔を見つめ返す。少し動揺して、目が泳いだ。するとむすりとした顔を背け、ぎこちなく口を開く
「…目、優しかったから」
「…あー」
「ちょっと、なんで嬉しそうなの」
「いや…っふ、は」
「久々に笑ったと思ったら何！？ちょ、もー！何なのー！？」
ああ、そうだ。Aに似てると思ったんだ。だから綺麗だと思った。一重に、こいつとは逆側に黒子があったから、ああ、こいつと同じだな、と
Aは緩んだ口元を手で覆って黙り込む俺をじっと見つめて、不思議そうに首を傾げた。もう怒ってない。いや、少し不満げだが。その様子に安心して、俺はゆっくりと鳶色の頭を撫でる
「お前に似てたんだよ」
「ほんとー？えへへ〜そんなに美人かなぁ？」
「お前のが、綺麗だよ」
「どうせお世辞でしょー？」
そうはいいながらも顔がでれでれと溶けたから、単純なやつ、なんて心の中で呟いた。垂れた目尻に口づけると、赤い唇が開いて、ごめんなさい、と小さく言った
俺は笑って、そっぽを向いて反省中のAの手を引いて胡坐の上に抱き寄せた。さっきまでの暗い雰囲気はどこに行ったのか、また嬉しそうに微笑んで俺の目尻にキスを落とす
「怒ってない？」
「なんでだよ」
「馬鹿って言ったから」
「ガキじゃあるまいし一々怒らん」
「…主演の俳優さんイケメンだったって言ったら怒る？」
「…気分を害す」
「可愛いね〜」
額に温い熱が触れる。久しぶりに会った恋人が知らない人を褒めていたら、そりゃ不満だし不安にもなるか。スキンシップが多かったのは寂しかったからだろう
黒子を撫でて頬を包むと嬉しそうに微笑むから、愛しさが溢れて笑いを溢すとゆっくりと唇を重ねた
終わり
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William(プロフ) - わ~コメントありがとうございます(^^)あのお話は数年間懐で温めてた自信作だったのでそう言っていただけて嬉しいです。番外編、頑張って更新しますので楽しみにしていてくださいね。いつもありがとうございます。 (2020年5月24日 23時) (
レス) id: 3ee161ce59 (このIDを非表示/違反報告)
モンキーリボン(プロフ) - 相澤先生のお話で目を舐める話を最近読んですごく印象に残ってたから読んでみたんですが、同じ作者様だったんですね！！好きです！！ (2020年5月24日 23時) (レス) id: 8f61effecf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：William | 作成日時：2020年5月23日 0時
