その後8 ページ27
「しょうちゃん？」
ぼやけた意識を引き戻されて、隣に視線を送る。Aは不安げに俺を見上げて、一重の優し気な眼差しでじっと見つめてくる
「ん。なんだ」
「これ、面白くない？変える？」
「いや、いい」
「…なんか上の空だね。どうしたの？」
話し出すのはAで、俺はそれに返事をする。いつものお決まり。今日は映画を見たいという要望に応えて黙っているだけだったから、少し驚く
話してもいないのに分かるのか。こいつは昔から些細な変化にもすぐ気づく
「学校のこと？」
「ん、まぁな」
「…消太の厳しさは、優しさから来てるものだって知ってるから」
全員除籍にしたの、知ってたのか。必要なノルマを満たせていないと考えた。それだけだった。が、生徒の不満げな顔にプレッシャーめいた感情を全く持たないかと言えば、答えはいいえだ
俺だって人間なんだし、正しい判断だったと分かっていても多少は気が重くなる
それでも態度に出ていたことはない。誰にも気づかれずに来たのに、なんでこいつにはばれるんだろう
「多分恨む人は、いないと思うの。雄英の子は、道徳的な面で賢い人多いし、消太が見た目の割にちゃんとした人だってわかってるよ」
「…そうか」
「必要な対処だったんだから。消太は、間違ってないよ。落ち込まないで」
頬を撫でた白い手が、冷たかった。自分のことでもないのにこれほど深刻に考えるなんて、こいつは本当に馬鹿だ。気遣う指が、邪魔な髪をよけて目元を触れてくる
多分、俺の真似だ。瞳がぬるくて、涙の膜が分厚くそれを覆っていたから思わず口元が緩む。不器用に上がった口角
自分が泣いたら俺が弱音を吐けないとでも思ってるんだろう。誤魔化しの笑顔は下手くそで、どうしようもなく愛おしい。こんなことで泣きそうになるって、どんだけ俺のこと大好きなんだ
「世界が消太を攻めても私は最後まで信じるから…」
「…ありがとな」
「ふふ…あ、でも米軍が攻めて来たら流石に公言はできない…ごめんね…信じてるけど死にたくはないから…」
こいつはたまに変なことを言う。お前がいつも俺のこと考えてるのも、信じてくれてるのも知ってるし、わざわざ変な例えなんて使わなくていいんだよ
垂れた目尻から涙が伝ったから、Aは焦ってそれを隠そうとする。いや、無理だろ。そう思いながら、頬を伝った水の跡を黙って拭う
どんな状況だ。俺は笑いながら返事をして、申し訳なさそうに見上げてくる彼女の、目元の黒子を親指で撫でた
殿堂入り祝い(いつもとあまり変わりませんが(笑))→←その後7
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William(プロフ) - わ~コメントありがとうございます(^^)あのお話は数年間懐で温めてた自信作だったのでそう言っていただけて嬉しいです。番外編、頑張って更新しますので楽しみにしていてくださいね。いつもありがとうございます。 (2020年5月24日 23時) (
レス) id: 3ee161ce59 (このIDを非表示/違反報告)
モンキーリボン(プロフ) - 相澤先生のお話で目を舐める話を最近読んですごく印象に残ってたから読んでみたんですが、同じ作者様だったんですね！！好きです！！ (2020年5月24日 23時) (レス) id: 8f61effecf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：William | 作成日時：2020年5月23日 0時
