44−歓迎 ページ44
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王都はいつも観光客や辺境からの国民で賑わっているが、今日ほど王都に人が集まった日はそうないだろう。
何故なら国を挙げてたった一人の娘を捜す為に、宮殿の騎士達がここぞとばかりに年頃の娘が住む家へ押しかけているからである。
「次期国王様はどんなお方だ」
「ええ、私はこう言いました!
偉大でお優しいと…」
「残念、彼女じゃない。次だ!」
騎士の中には、とりわけ目立った二人が。
率先して娘をエスコートする男、杏寿郎騎士。
そして後ろで腕組みをしながらあくびを漏らす、天元騎士。
その立ち姿が披露されたのは初めてだと言っても過言ではないため、美形揃いの騎士に、呼ばれた娘たちは皆本来の目的を忘れて騎士達に見惚れている。
「アンタも王都の号外は聞いているな? 早速聞くが、次期国王は?」
「つ、強くて逞しいお方です…!」
「オイオイ、そりゃ俺のことか? 目がハートになってんぞ、お嬢さん」
「天元、その娘は違う! 次へ行くぞ!」
両手を絡めてうっとりする少女に、面食いの天元騎士も流石にうんざりしていた。
_これだから騎士ではなく大公やらの年配が行けと何度も言ったってのに。
天元の頭の中ではそんなネガティブな発想が広がっているが、あくまで公務の一環なので文句は言わない。
「本当にその女性が見つかるだろうか?」
「お前、昨日の彼女見てねえのか? えれえ美人の娘だよ」
「騒がしいのは得意ではないのでずっと見回りをしていたからな!」
「騒がしいの概念みてえな存在が何言ってんだ?」
「むう! だが、そうだな…。遅刻して迷子になっていた女性は見たぞ! あの少女はなかなか愛いかった!」
「いや、誰だよ」
二人とも王都での女性達の的外れな回答に少々疲弊していた。
雑談でもしていないと、気が遠くなるような訪問に身が折れそうなのである。
_そしてその後も案の定、実弥王子……時期国王から仰せつかった合言葉の答えを正確に答えられた令嬢は誰一人として現れず。
ついに彼らは、西の辺境のエゼルの地へと足を踏み入れていた。
「はァー…。あのお嬢さんは一体どこに隠れてんだ。こんな千載一遇のチャンスだってのに」
「そう疲れるな天元! さ、これで最後だ!」
彼らはエゼル一の辺境伯の屋敷に馬を止めた。
騎士達が馬から降り立った時、その屋敷の玄関が開く。
「_ようこそ」
扉から顔を出したのは、大人しく目を細める継母だった。
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えん - 実弥推しだったので、すごく嬉しいです!リクエストできるなら、白雪姫の夢主と王子の実弥、鬼滅キャラの七人の小人、見てみたいです! (2021年6月3日 20時) (レス) id: dfa45071da (このIDを非表示/違反報告)
まゆまゆ(プロフ) - 実弥オオカミ!素敵です!リクエストしたいです!何だっけ?獣の子?の主人公を女にして師匠を実弥に、で恋物語に…それかオオカミ子供のアメとユキ?かジブリのハウルパロディ、もし叶うなら小芭内をお願いしたいです、玄弥、小芭内のお話ラブなのがなかなか無いので (2021年3月13日 14時) (レス) id: 442319c796 (このIDを非表示/違反報告)
めあり - 鬼滅版シンデレラですね (2021年2月14日 4時) (レス) id: ca5a6634ce (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - 湯海さん» 湯海様、最後までご愛読ありがとうございました!沢山うんうんと悩んだ結果の役ハメでしたので、そう言って頂けて努力した甲斐がありました…!この作品での実弥王子は本当にまっすぐでありながらもあざとかったですね……それすらも愛おしい(錯乱) (2020年11月30日 17時) (レス) id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - ayaさん» コメントに気付くのが遅くなってしまいました、すみません!aya様、こんな所にもコメント残して下さってたんですね…!ありがとうございます!aya様を幸せにする小説を作り上げることができて嬉しいです(^^) (2020年11月30日 17時) (レス) id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おそらまめ | 作成日時:2020年5月31日 17時