あなたはオオカミ 【不死川実弥】

27−変身 ページ27

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そうしている間にも時間は刻一刻と過ぎて行く。
慌てる様子もなく炭治郎と呼ばれたその魔法使いは彼女の手を引いた。

そしてその後を追うように、動物達もついて行く。
ひらけた家畜の小屋まで行くと、ふむ、と炭治郎が顎に手を置いて考える。





「そうだな、まずは馬車が必要だ。何か大きな作物は育ててないか？」

「ば、馬車…？ 作物って……何を言っているの？」

「舞踏会に行けないと泣いていただろう。心配しなくても平気だ
俺が君を舞踏会へ行く手助けをしてあげよう」

「そんな、見ず知らずの魔法使いさんに優しくしてもらうなんて
私、貴方には何も返せないのに」

「優しさは見返りなんていらない。君が今まで動物達にしてきたようにね」





炭治郎は西の森の魔法使いだった。
北に居る悪い魔女とは違って、白の純粋な魔法を使う。


そして彼はずっと彼女の善行を見守っていたのだ。
Aが優しさを忘れずにやってきた行為は無駄ではなかった。





「ただ、俺は変身魔法しか使えないんだ。だから馬車に変身させる為の大きな作物が必要なんだけど」

「さ、作物ならあそこに……」

「＿カボチャか！ よし、良いなあれにしよう！」





彼が光る杖を振る。
すると、先で栽培されていたカボチャの一つがむくむくと大きくなったかと思うと……それは意思を持ったみたいにこちらへ動き出す。


「わぁ…」思わず彼女の口から感嘆のため息が漏れた。
そして二人の間にやってきたカボチャは姿を変えて、みるみる黄金の馬車へと変わった。





「馬車、一丁あがり！」

「すごい！ 炭治郎さん、あとは何を用意すれば良い？」

「あとは、そうだな……ネズミ4匹にリスが2匹！」

「ネズミ…リス？ 丁度居るわ、私の大切な友達が」





彼女の曇りなき笑顔に、その場に居たネズミとリス達はビクリと毛を逆立てた。
リスは優しく触れる彼女に、恐る恐るながらも大人しく従って乗る。

しかしネズミは面白い具合に逃げ回るので、辛抱ならずに魔法使いの杖が振られた。





「凄い……格好良い、みんな」

「さて、あとはリス二匹だな。お付きの者と御者が必要だ！
それ、いくぞ！」





妖精の粉のようなものがリス達に降りかかり、それはたちまち姿を変えていく。
愛らしい少女二人に変身したカナヲとアオイは恥ずかしげにAの側に立った。





「貴方達、人間の姿もすごく可愛い」

「ありがとう、A」

「さぁ、準備は出来た！ 舞踏会に向かおう！」





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