12−消えた王子 ページ12
.
ーー王都、城下町・グロリアッサ。
買い出しに来た私は王都で職を見つけた元使用人のしのぶと久しぶりに再会していた。
「A様。顔色が良くありませんね」
「そう見える?」
「…何故酷い扱いに我慢するんです?」
旧友に会った感じがして、しのぶと並んでいると日々の緊張した体から急に力が抜ける気分だ。
食材を手に持ちながら私はしのぶに笑いかけた。
「…お父様とお母様と、約束したの」
「約束?」
「うん。幸せに暮らした家を守る、約束」
「…そうですか…」
しのぶは少し寂しそうに…だけど心底嬉しそうに微笑んでくれた。
まるで私を応援してくれているかのように。
すると、賑わう城下町と宮殿を繋ぐ門構えの上の物見やぐらから、宮殿の臣下の格好をした中年の男性が拡声器と筒状の紙を持って私たちの前に立つのが見えた。
集まる城下町に居た人達。
宮殿からのおふれなんて、珍しいな。
「ユグニール王国の全国民に告ぐ。我が国は先の反乱で王を不在としており、同盟国の王に政権の代表を譲渡していた。しかし調査を進めると、10年前に巻き込まれた第一王子が御存命である事が判明したのである」
臣下の方のおふれに城下町の人物はざわついた。
もちろん、私としのぶもそう。
どよめきが起こる城下町を治めて臣下の方は続ける。
「現在王子の行方は不明であるが、必ず生きている。
王子を発見した者にはもれなく褒美を与える。_以上」
「しのぶ、王子ですって」
「ええ…本当に生きているんでしょうか?」
宮殿の人達が城下町に降りてきて壁や煉瓦に手配の張り紙を貼り付ける。
それは10年前の王子様の肖像画で、白銀の髪に柔らかな表情をした美少年だった。
もし生きているとするなら、彼は今20歳ぐらいだろうか。
見つかると良いけれど。
「ただいま戻りました」
「遅いじゃない。洗濯物は出来てるの?」
「出来てます奥様。今お持ちします」
「いいえ、今からレッスンなの。入ってこないで頂戴」
そう言ったきりバタンと閉められた重い扉。
仕方なく広間の掃除をしていると、奥様の部屋からピアノの音色と何とも形容しがたい姉様達の声が聞こえる。
その歌声に、隠れていたネズミたちが出てきて耳を塞ぐように私のポケットの中へ隠れ込んできた。
「お夕食の時間までの辛抱ね」
…はあ、この歌声。
本当になんとかならないかな。
.
600人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
えん - 実弥推しだったので、すごく嬉しいです!リクエストできるなら、白雪姫の夢主と王子の実弥、鬼滅キャラの七人の小人、見てみたいです! (2021年6月3日 20時) (レス) id: dfa45071da (このIDを非表示/違反報告)
まゆまゆ(プロフ) - 実弥オオカミ!素敵です!リクエストしたいです!何だっけ?獣の子?の主人公を女にして師匠を実弥に、で恋物語に…それかオオカミ子供のアメとユキ?かジブリのハウルパロディ、もし叶うなら小芭内をお願いしたいです、玄弥、小芭内のお話ラブなのがなかなか無いので (2021年3月13日 14時) (レス) id: 442319c796 (このIDを非表示/違反報告)
めあり - 鬼滅版シンデレラですね (2021年2月14日 4時) (レス) id: ca5a6634ce (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - 湯海さん» 湯海様、最後までご愛読ありがとうございました!沢山うんうんと悩んだ結果の役ハメでしたので、そう言って頂けて努力した甲斐がありました…!この作品での実弥王子は本当にまっすぐでありながらもあざとかったですね……それすらも愛おしい(錯乱) (2020年11月30日 17時) (レス) id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - ayaさん» コメントに気付くのが遅くなってしまいました、すみません!aya様、こんな所にもコメント残して下さってたんですね…!ありがとうございます!aya様を幸せにする小説を作り上げることができて嬉しいです(^^) (2020年11月30日 17時) (レス) id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:おそらまめ | 作成日時:2020年5月31日 17時