今日もあなたが好きでした。(Yuri)

過去へ ページ6

***








「過去を変えたいかと聞いたけど、

一度起きた出来事を変えるのは簡単じゃないんだ。」








「簡単じゃないって…」






.









「10日前に戻すのは、いつ事故に遭うか分からないから。

つまり、確実に11月30日に遭うか分からないの。」








.








小首を傾げ、その人はさらに続ける。








.










「でも事故に遭うのは、必然かもしれないし…









未来は一分、一秒、一つの選択で変わるから

災いが、きみか彼のどちらかに降るかも分からない。」









.









まるで試すような言い方。









私は、きゅっと唇を噛んで

その人の言葉に耳を傾ける。









.









「たった一つの選択で次は二人とも事故に遭うかもしれないし

一人しか助からないかもしれない。









それでも…過去を変えたい?」








.









不安を隠しきれず、じっと黙り込んでしまう。






.










たった一つの選択で、未来が変わること。

次に事故に遭うのは、私かもしれないということ。









過去をやり直せたとしても、

“今”と違う今に帰ってくるということ…








.








でも…








後悔だらけの“今”が無くなって、

“今”と違う未来になるというなら…









.









「変えたい、です。」









.









小さくて、弱々しい頷きだった。

だけど、この人はどこか満足気な吐息を吐き。









.









「それじゃ、何がなんでも過去を変えて…

行ってらっしゃい。」







「わっ…!」









.









微かに笑みを含んだ口調のあと、

カッと光の洪水が降り注ぐ。








そのあと、なんだか眠たくなって…









.








「え…」








.







ザワザワとした騒音に、そっと目を開けた。

今いるのはさっきいた通り。







だけど、夜だったのに空は明るくなっていて

さっきまでいた人は、どこにもいない…







.









「ゆめ…?」









.







にしては、ものすごくリアルだったような

気がする…








.









“今年、20××年を彩ったアーティストを紹介!

まずは今人気の…”








.








大型ビジョンが違う番組に切り替わり、

ふと、そちらに目をやる。








そこで私は、信じられないものを見た。









.









“4人組ダンスボーカルグループ、HSJ!”








.








そこに表示されていた西暦は、10年前の年…








モニターに映っていたのは、10年前に姿を消した

HSJメンバーの、知念さんだった…









***

＊1日目→←代償

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す