今日もあなたが好きでした。(Yuri)

過去 ページ2

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学生時代の私は、暗かった。








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嫌がらせを受けてた訳じゃなかったけど

友だちはいなくて…








家に帰っても両親は共働きでいなくていつもひとり。

時間が過ぎるのを待つだけの日々だった。








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だけど…たまたま付けてたテレビを見て、

私の世界は変わった。









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“今日のゲストは今人気のダンスボーカルグループ、

HSJの皆さんです”








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テレビに出ていたのは、4人の男性たち。









その中でもあの人は一番小さかった。

メンバーの後ろで小さく立っていた。







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だけど、ダンスは誰よりもキレがあった。

しなやかで力強くて…









軽々とステップを踏んで楽しそうに踊る姿が

この世の何よりも綺麗で、彼だけの世界がそこにはあった。









この日、私はその人の虜になった。







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HSJの公演があれば頑張ってチケットを取った。

ファンレターも毎日書いた。









HSJが好な子とSNSで繋がった。

初めて友だちが出来た。








知念さんのおかげで…私の世界が広がった。






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そして、10年前の11月30日…

知念さんのバースデー公演の日。







倍率が高かったけど、何とかチケットが取れた。

しかも念願のSS席。








私は…浮かれてた。







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席に着いた瞬間、ガンっ、と大きなネジが落ちてきた。

私は気にしてなくて、今から始まる公演が楽しみで…






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「え…」








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瞬間、頭上が暗くなった。








顔を上げようとした瞬間、

誰かに手を引かれ、その人と私の位置が逆になった…









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ズシャァン…!








「いっ…」









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尻餅をついた。

何が起きたか分からなくて、私は何度も瞬きを繰り返す。









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「なに、今の…」

「て、鉄パイプが落ちてきて…」








「誰か下敷きになってない!?」








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周囲の声が遠くで聞こえる。

私は、目の前の光景が信じられなかった。









だって、私の手を引き、

私の代わりに下敷きになってるのは…









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「ちねん、さん…?」








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“誠に申し訳ございませんが

本日の公演は中止とさせて頂きます”








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無機質なアナウンスが流れる。

目の前で担架で運ばれる知念さんは血まみれだった。








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後日、建物の老朽化による事故だと

ニュースが流れた。








私を庇った知念さんは、

二度と踊れない身体となった…





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