235 エゴイスティック・ネゴシエイト Side M ページ42
俺が声を張り上げたせいか、ベッドで体を丸めて眠っていた白猫＿＿ミハイルはひっそりと目を覚まして、Aの死角である背後から、そのオッドアイで俺を見つめていた。
静かにしてよ、眠れないじゃない＿＿なんて、Aと同じ中性的な声色で、そんな幻聴が聞こえたりなんかしたから。
俺はどれだけ毒されているんだ、と頭を横に振って、どろどろの思考を払い除けようとする。
「兄……って」
「前、話してくれたのを覚えていない？私のプレイには、他人の癖が残っている。ひとりはあの野坂悠馬。ひとりは父親
もちろん、はっきりと覚えていた。
Aを追い詰めていた、というのもあれば、純粋に気になっていたのに、するりと言い逃れられてしまったから、というのも一因。
「そして君は、こうも言った。最後の1人は誰？もしかして兄弟なんじゃないか、って」
ふむ、と態とらしく顎に手を当てて、頷くA。
そんな演技がかった姿も、何だか妙に様になっていて嫌になる。
「あの時は知らなかったけれど、君にも弟がいるから、癖が残るくらい一緒にプレイしていたとなれば兄弟じゃないか。君は真っ先に、そう思ったんだね」
「……別に。俺がどうとかじゃなくて、何となくだけど」
「今更にはなるけれど、教えてあげる。君の言った通りだよ、あの癖は私の兄のもの。2年前、丁度今の私達と同じ歳で、亡くなってしまったけれど」
いつもみたいに余裕ありげで、それでいて冷静で。
あまりにも平坦に言い切るものだから、うっかり聞き流してしまいそうになった。
でも確かに、“亡くなってしまった”、とAは言ったのだ。
そう言われた、ほんの一瞬だけ＿＿病室で眠る光の姿が、脳の奥でちらついた。
そして事故に巻き込まれたあの時の、激しいフラッシュバック。
もし俺が同じように、兄弟を亡くしたら。それは、他の誰より容易く想像が出来てしてしまって。
「……あっそ。それはどうも。で、本題は？まさか、自分の兄貴の話聞いてほしくて脅しまでかけた訳？」
思わず呼吸を上擦らせたのを誤魔化そうと、
するとAは、その反応を待っていたとでも言いたげに、口元を歪ませていた。
「ところで兄の話となると、どうにも避けては通れないんだよね。“アテナの羅針盤”からは……はは、ほらね。そう言われたら、気になってこない？」
episode236 Side M→←episode234＿＿in the past Side Y
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三峰 契(プロフ) - かなりさん» コメントありがとうございます！のんびり更新ですが、これからも頑張ります！ (2020年10月9日 14時) (
レス) id: be32126b2e (このIDを非表示/違反報告)
かなり - これからも体に気をつけて頑張って下さい！ずっと応援しています！！ (2020年10月4日 19時) (レス) id: 517f37b5b5 (このIDを非表示/違反報告)
かなり - 続編おめでとうございます！私は、この小説が大好きでとてもドキドキする小説です！！私、野坂君が大好きなのでまだこの小説を続けて欲しいです！！ (2020年10月4日 19時) (レス) id: 517f37b5b5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：三峰 契 | 作成日時：2020年10月1日 12時
