219 ブルーアイリス＿＿Shortly before ページ26
「私の兄も、一星充くんと同じようなことをしたことがあるんだ。私を守る為に、私以外のものを沢山犠牲にした」
無機質なカーテンの奥に隠された窓の外は、もう既に暗くなり始めていた。
雨が降るのは午後からだとは言っていたけれど、このままでは少し早めに降り出してしまうかもしれない。
だからといって、早めに帰ろう、なんて思えるところではないけれど。
一星光くんと深く目を合わせようと前にのめると同時、腰を掛けていたパイプ椅子が、き、と僅かに軋む。
「否定はしなくちゃならないことは確かなのに、嫌いになんてなれる訳はないよね。でも他ならない私や君が否定することで、私や君の兄がこれまでに心を砕いてきたことは全て水泡に
だからその苦しみを私が取り上げてしまえば、兄が生きる意味すらも奪ってしまうような気がした。
雨が降り込んでしまわないようにと、薄く開いていた窓を静かに閉じれば、夏風にふわふわと泳いでいたカーテンも大人しく押し黙ってしまう。
「じゃあ、……じゃあ」
向けた背に、ぷつんと刺す細針のような囁き声。
一星光くんの震えた吐息が、白一面の病室の空気そのものをざわざわと揺らした。
「俺が兄ちゃんのやってきたこと、要らないって言ったら……俺のために殺した兄ちゃんの心は、報われないままになる。そしたら、そしたら兄ちゃんは、俺のことどう思うんだろう……？」
頭を抑えて、軽く息を切らしながら。
どこまでも冷たい恐れの中に、体も思考もずるずると沈み込んでいく姿。
苦しくても、逸らしてはいけない。
くらくらと眼前を責め立てる責任感、罪悪感、フラッシュバック。
「守らなきゃ良かったって。そんな後悔をさせてしまうくらいならいっそ、俺はずっと知らないふりで＿＿！」
(駄目だよ、そんなの、一番駄目だ)
だって私はあの時、知らなくちゃいけなかった。
知ることさえも出来なかったら、由羽真くんのことを止められもしなかったんだから。
「一星、光くん」
私と同じ思いを、君にはさせたくない。
それは単なるエゴだ、と言われてしまうのだろうけれど。
広い海の色、広い空の色。
そして今は、涙が零れて落ちそうな、ただただ悲しい色。
酷く澄んだ
「私と一緒に、お兄さんを助けよう。その為に私は、君に会いに来たんだよ」
……ああ、それなのに。
(どうして
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 279人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「イナズマイレブン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
三峰 契(プロフ) - かなりさん» コメントありがとうございます！のんびり更新ですが、これからも頑張ります！ (2020年10月9日 14時) (
レス) id: be32126b2e (このIDを非表示/違反報告)
かなり - これからも体に気をつけて頑張って下さい！ずっと応援しています！！ (2020年10月4日 19時) (レス) id: 517f37b5b5 (このIDを非表示/違反報告)
かなり - 続編おめでとうございます！私は、この小説が大好きでとてもドキドキする小説です！！私、野坂君が大好きなのでまだこの小説を続けて欲しいです！！ (2020年10月4日 19時) (レス) id: 517f37b5b5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：三峰 契 | 作成日時：2020年10月1日 12時
