episode218 ページ25
＿＿“今から話す内容はきっと、あまりにも信じ難いことだと思う。けれど、この目が捉えた事実であること。……これだけは必ず、保証するよ”。
Aが、自身の目を引き合いに出す、ということ。
それは大きな勝負に出る合図で、簡単に他者に否定をさせない為の前提。
西蔭もそのことに気付いたようで、先程は話を急かすようにやんわりと促していたものの、僕と目を一度合わせてから、次の言葉に迷っていた口をゆっくりと閉じた。
「うん。分かった、僕達はちゃんと受け止めるよ。だからAも無理せずに、Aのペースで話して。……分かった？」
「……分かってるってば」
何か都合の悪いものでも見透かされたか、一度だけ眉を顰められた。
それも重ねて悟られないようにと、机の上に置いてあった新品のペーパーナプキンを1枚、正方形になるように半分に裂いて、簡単な星型に折りながら。
それは何気ない遊び心？
もしかすると、単に気休めだったのかも。
「まず私達が手を焼いているのは、イナズマジャパンのメンバーであり、ロシアのオリオン財団から“オリオンの使徒”としてやって来た、【一星充】くん」
一つ目。綺麗に折り終えたペーパーナプキン。
とんとん、と人差し指で触れて、Aはその小さな紙の星に名前をつける。
「今回会おうと約束したのは、彼と一緒にロシアから日本へ移ってきた、事故の後遺症を患って入院生活を送っている、【一星光】くん」
同じように折り終えた星が、先程の星の隣に並ぶ。
その時Aがどこか愛おしそうな、そして何より寂しそうな目で見つめていたものだから。
形を模して折られただけのはずの紙でさえも、実は先程の雨粒と一緒に空から落ちてきた本物の星屑なんじゃないか、なんて思い始めていた。
でも本当に今思いを馳せていたのは、ずっと遠くの宙の話ではない。
手を伸ばせばすぐに触れられる、一星君のこと。
「……ここまでは、いいよね。ふたりとも」
わざわざ念を押すように確かめたのは、裏を返して、“本題はここからだ”という意味だったんだろう。
(少し前の僕や、少し前の西蔭だったら、苦しそうなAを思わず引き留めていたけど)
「うん。それで、……どうしたの」
「居たけど、居なかったんだよ。一星光くんは」
＿＿くしゃ。
Aは僕の言葉を遮ってしまうように、机に並んでいた星の片方を掌で握り潰していた。
「だって、私が病室で出会ったのは、確かに私の知っている、一星充くんの方だったの」
219 ブルーアイリス＿＿Shortly before→←episode217 Side S
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三峰 契(プロフ) - かなりさん» コメントありがとうございます！のんびり更新ですが、これからも頑張ります！ (2020年10月9日 14時) (
レス) id: be32126b2e (このIDを非表示/違反報告)
かなり - これからも体に気をつけて頑張って下さい！ずっと応援しています！！ (2020年10月4日 19時) (レス) id: 517f37b5b5 (このIDを非表示/違反報告)
かなり - 続編おめでとうございます！私は、この小説が大好きでとてもドキドキする小説です！！私、野坂君が大好きなのでまだこの小説を続けて欲しいです！！ (2020年10月4日 19時) (レス) id: 517f37b5b5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：三峰 契 | 作成日時：2020年10月1日 12時
