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episode35 ページ35

あの後灰崎くんが部屋を出て間もなく、別の入口から鬼道先輩がやって来た。
鬼道先輩が入ってきたその方面には、監督の部屋がある。何かの用事で監督に呼ばれていたのかも知れない。

「すまない、待たせただろうか」

「いえ。つい先程まで話し相手がいたので」

椅子から立ち上がり、鬼道先輩の歩く方向へと着いていく。練習は昼と同じく、屋内グラウンドを利用するらしい。

朝は隣に西蔭さんがいたからだろうか。こうして鬼道先輩と一対一となると緊張感を覚えていたところで、行き先の屋内グラウンドへと真っ直ぐ正面を見つめ、目線の合わなかった鬼道先輩が此方を向く。

「少し表情が晴れたように見えるな」

鬼道先輩の癖らしい、フッと不敵な笑み。

私の表情はどちらかと言えば硬い方。よく見ていないと気付かれないだろう、と自負はしているけれど、どうにも鬼道先輩は私が思い悩んでいたことに気付いていたみたい。

「先程話していた、灰崎くんのお陰です。選手としてぶつかってくれることを嬉しく思います」

全力で取りに来いよ。
彼はそう言ってくれた。

思わぬ形で灰崎くんに発破を掛けられることになったけれど、気持ちが僅かでも晴れた心地がした。
彼には吉良先輩がいる。絶好のライバルの座につくということまでは叶わずとも、高め合える相手でいたい。

その言葉に”そうか”と安心したように頷きながら、鬼道先輩は続ける。

「……A、お前が少し気掛かりだったんだ。試合以降、あまり調子が良くなかったように思えた」

昼の練習ではなく、わざわざこうして自主練習に呼んでもらったのはそういうことだったんだ。
思った以上に前回の試合が響いていたのかも知れない。表情に出ない代わりに、行動に表れてしまったよう。

己を隠し通すにはまだまだだね、と悠馬に言われてしまいそう。
……やたらリアルに想像出来てしまった。苦々しく目を押さえながら、鬼道先輩に続いて屋内グラウンドの入口をくぐる。

中には先に練習に取り組んでいるメンバーがいた。
円堂先輩と、一星充くん。

「まだお前だけではなく、チーム全体の思い悩みは晴れないだろう。しかし……」

「待って、鬼道先輩」

酷い胸騒ぎに、鬼道先輩の声を遮ってしまう。

一星充くんの足元に置かれたボールに、普通はあるはずのない突起。
何かのスイッチだ、と頭が認識した時には、既にあの子の脚は振り下ろされていた。

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(プロフ) - 翡翠さん» 初めまして、第一幕を最後まで読んで頂きありがとうございます!ゆっくりスピンオフの方も進めていきたいですね、本編とは違った雰囲気の3人を書けたらなと思っています!コメントありがとうございました! (2019年10月6日 8時) (レス) id: be32126b2e (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - ういさん» 初めまして、第一幕に最後までお付き合い頂きありがとうございました!沢山ある作品の中で、ういさんの楽しみになれていることが作者としてとても嬉しい限りです。お気遣いまで本当にありがとうございます、引き続き更新頑張りますね!コメントありがとうございました! (2019年10月6日 8時) (レス) id: be32126b2e (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 裕大@受験生のため低浮上さん» 初めまして、最初から読んで頂きありがとうございます!テレビ電話越しや西蔭さん経由でもあの甘やかしようなので、日本代表合流後は更に!と書いている本人もドキドキしていたりします……!これからもお付き合い頂けたら嬉しいです!コメントありがとうございました! (2019年10月6日 8時) (レス) id: be32126b2e (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - アオさん» アテナの羅針盤、響きがそっとお気に入りです。笑 第二幕では野坂さんと主人公の出会い、過去の関係、主人公の目が目覚めた過去に少しずつ触れられると思いますので、楽しんで頂けたら嬉しいです! (2019年10月6日 8時) (レス) id: be32126b2e (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - 初めまして!とっても楽しく読ませて貰っています!王帝月載宮スピンオフ楽しみにしてます! (2019年10月6日 0時) (レス) id: 0bbffb7c2b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2019年8月16日 12時

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