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episode29 Side M ページ29

「……離して、力入れ過ぎだよ」

可愛らしい少女にも、変声期前の少年にも聞こえる、中性的で透き通るような声。

それでも強引に連れ出す為に引いた手はとても非力で、俺の手で包めてしまうほどに小さく華奢だった。

花綺更 A。冷たい目ですました、優等生ぶったプレーヤー。
そういった印象しかなかったけど、こうして見れば1人の女の子にしか見えなくなる。

「すみません、もしかして痛かったですか?」

その問い掛けに、答えは返って来ないまま。
きゅっと口をつぐんで此方を柔く睨む視線をそっと宥めようと、ゆるりと心の内へ潜って取り入るように優しく微笑んでみせる。

掴んだ手は、まだ離さない。

「君、随分謙虚な子だったように見えていたんだけどな。意外だね」

「あ……ちょっと強引でしたね。でも僕、Aさんと仲良くなりたいんです。ほら、ボールを通じてお互いを知るというのは悪くないでしょう?」

そう言い聞かせながら、もし逃げようなどと動き出しても容易く捕まえられる距離を保ったままゆっくり手を解く。
花綺更 Aは差し出したボールを躊躇いながら受け取り、観念した様子でニヒルに口元を歪ませた。

「選手同士が築く関係として、間違ってはないかな。異論は無いよ、君のことも知ってみたいし」

「あは、嬉しい。Aさんも僕のことを知りたいと思っていてくれたんですね、きっと僕達仲良くなれますよ」

”うん、そうかも”と興味無さげに聞き流しながらトントン、とリフティングを数度。爪先で弾ませたボールと緩やかに戯れた後、ちょうど俺との間の足元にボールを置き止めた。

「これから仲良くなれたらいいね、可愛い一等星(リゲル)

その目に灯したのは、痛みを伴う程の鋭さ。

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(プロフ) - 翡翠さん» 初めまして、第一幕を最後まで読んで頂きありがとうございます!ゆっくりスピンオフの方も進めていきたいですね、本編とは違った雰囲気の3人を書けたらなと思っています!コメントありがとうございました! (2019年10月6日 8時) (レス) id: be32126b2e (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - ういさん» 初めまして、第一幕に最後までお付き合い頂きありがとうございました!沢山ある作品の中で、ういさんの楽しみになれていることが作者としてとても嬉しい限りです。お気遣いまで本当にありがとうございます、引き続き更新頑張りますね!コメントありがとうございました! (2019年10月6日 8時) (レス) id: be32126b2e (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 裕大@受験生のため低浮上さん» 初めまして、最初から読んで頂きありがとうございます!テレビ電話越しや西蔭さん経由でもあの甘やかしようなので、日本代表合流後は更に!と書いている本人もドキドキしていたりします……!これからもお付き合い頂けたら嬉しいです!コメントありがとうございました! (2019年10月6日 8時) (レス) id: be32126b2e (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - アオさん» アテナの羅針盤、響きがそっとお気に入りです。笑 第二幕では野坂さんと主人公の出会い、過去の関係、主人公の目が目覚めた過去に少しずつ触れられると思いますので、楽しんで頂けたら嬉しいです! (2019年10月6日 8時) (レス) id: be32126b2e (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - 初めまして!とっても楽しく読ませて貰っています!王帝月載宮スピンオフ楽しみにしてます! (2019年10月6日 0時) (レス) id: 0bbffb7c2b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2019年8月16日 12時

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