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episode26 ページ26

ドアを開けた先、一星充くんは少年特有のあどけなく甘い笑みを浮かべてそこに佇んでいた。

朝を迎えたばかりの世界に、きらきら、ちかちかと蒼色の星が降って見えた。
幾つもの星を連れた目の前の男の子は、痛いくらいに真っ直ぐな眼差しを此方に向ける。

表情とはちぐはぐに、いつもよりも近くに迫ったラピスラズリの瞳は、眩く差し込んだ陽光すら呑み込んでしまいそうな程に深い。
最早衝撃だと呼ぶに等しいくらい、アンバランスなコントラスト。

「ごめんなさいAさん、部屋まで来てしまって」

「ううん、呼びに来てくれて助かったよ。このままだと、私も西蔭さんも朝食を摂り損ねるところだったかも」

部屋から1歩も動かなかった西蔭さんに視線を送った。
そこには心底納得の行かなさそうな表情が覗いたけれど、”振り回されることなんて慣れている、今更だ”と半ば無理矢理諦めを付けた様子を見せた後に部屋から出てくる。

一星充くんの丁寧な挨拶に、西蔭さんはいつもと変わらず冷静、悪く言えばやや無愛想に挨拶を返していた。
”これで満足か”。そんな声が聞こえてくるような目線。小さく頷き、”問題ないです”と伝える。

「早く行きましょう、みんな待ってますよ」

時間もないし、と促されてそのまま、食堂へ足を向かわせる。それにぱたぱたと付いてきた一星充くんは、私の隣を歩きながら”そういえば”と口を開いた。

「Aさん、昨日は大丈夫でしたか?試合の途中から、あまり顔色が優れていなかったように見えて」

思わぬ図星。
豪炎寺先輩の怪我の後、フィールドを見つめていた時にも声を掛けられたっけ。案外見られているものだ。

「……体調に問題はないよ。いつ試合に出してもらえるか分からないし、コンディションは整えておかないとね」

「そうですね!僕も、早く試合に出たいな」

君は一体、試合ではどう動くつもりなんだろう。
待ち焦がれるように弾んだ声に、上手く答えることは出来なかった。

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(プロフ) - 翡翠さん» 初めまして、第一幕を最後まで読んで頂きありがとうございます!ゆっくりスピンオフの方も進めていきたいですね、本編とは違った雰囲気の3人を書けたらなと思っています!コメントありがとうございました! (2019年10月6日 8時) (レス) id: be32126b2e (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - ういさん» 初めまして、第一幕に最後までお付き合い頂きありがとうございました!沢山ある作品の中で、ういさんの楽しみになれていることが作者としてとても嬉しい限りです。お気遣いまで本当にありがとうございます、引き続き更新頑張りますね!コメントありがとうございました! (2019年10月6日 8時) (レス) id: be32126b2e (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 裕大@受験生のため低浮上さん» 初めまして、最初から読んで頂きありがとうございます!テレビ電話越しや西蔭さん経由でもあの甘やかしようなので、日本代表合流後は更に!と書いている本人もドキドキしていたりします……!これからもお付き合い頂けたら嬉しいです!コメントありがとうございました! (2019年10月6日 8時) (レス) id: be32126b2e (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - アオさん» アテナの羅針盤、響きがそっとお気に入りです。笑 第二幕では野坂さんと主人公の出会い、過去の関係、主人公の目が目覚めた過去に少しずつ触れられると思いますので、楽しんで頂けたら嬉しいです! (2019年10月6日 8時) (レス) id: be32126b2e (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - 初めまして!とっても楽しく読ませて貰っています!王帝月載宮スピンオフ楽しみにしてます! (2019年10月6日 0時) (レス) id: 0bbffb7c2b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2019年8月16日 12時

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