【野坂悠馬】戦術の皇帝と聡眼の麗乙女【イナズマイレブンオリオンの刻印】

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「確かにそう聞いたのか」

「聞こえた訳ではないけれど」

「それなら、何故」

私はあの子の声を聞き取れることはできなかった。
だけど、耳ではなく”目で追える言葉”だってあるのだ。

紙とペンを取り出し、あの暗い横顔を思い出しながらローマ字を並べていく。

o-o-i-a-i
i-o-n-a
a-e-u

「まさか、読唇術か」

12字のローマ字が「a-i-u-e-oの母音とnの撥音(はつおん)のみ」という、それだけの規則性から西蔭さんは自ずと結論を引き出してしまったらしい。

「あっさり分かるんですね」

「あんた、想像以上に視覚依存らしいからな。楽譜起こしの課題、旋律じゃなくて運指で覚えたんだろう」

……この話は多分、悠馬から聞いたんだろう。

王帝月ノ宮は、実技教科も普通の中学と比べてかなり進んでいた。音楽や美術は脳の発達促進……それに脳の病が進むのを遅らせる、なんて影響があるというし、アレスの教育プログラムとしても理にかなっていたんじゃないだろうか。

美術も得意だとはお世辞にも言えないが、それ以上に音楽がどうしても苦手。目に見えないものの記憶を上手く持続させられない。 だからそれを、視覚に頼るという形で乗り切った。

今回だって、その経験に基づいただけだ。
ピアノの音も遠くの声も、耳で捕まえられないなら目で捕まえればいい。

「恐らくi-a-iは”試合”で、i-o-nは”日本”」

「それで最後の3字が”負ける”、だって？」

「言いたいことは分かります。a-e-uなら”勝てる”も一緒だって、悠馬にも指摘されました」

o-o-i-a-iで”この試合”、i-o-n-aで”日本は”＿＿

「でも、あの子が”勝てる”って言わなかったのを確定させられる証拠がない訳じゃない」

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