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episode19 ページ19

「朝食に行く前に今から少しだけ話をさせて下さい、西蔭さん」

朝は苦手だ。体が起こせても、頭が起きていない状態と言えば良いのだろうか。朝日の差し込む部屋で、私は意識と無意識の間をくらげのように揺蕩(たゆた)う。

しかし、今朝はそんな風に寝惚けている場合では無さそうだ。

人のいる場所では話せない、だけどいち早く伝えておきたい。
その条件を最もスムーズに整えることができるのは、寝起きの悪い私をわざわざ西蔭さんが起こしに来てくれるこのタイミングだということ。

いつも通り瞼が重たく降りてくるのを阻止し、(おぼろ)な意識にくっきりとした輪郭を描かせる。それでもまだゆるゆると訪れ続ける眠気を、軽く頬を叩いて追い払った。

珍しく素直に目を覚ました私を見て西蔭さんは驚きが隠せないらしい、切れ長の目を丸く見開く。

「毎朝こうして起きてくれたら俺も楽なんだが」

「……毎朝申し訳ないです」

「それで、その話は今しないといけないのか」

こくり、と小さく頷くと、西蔭さんは部屋の掛け時計を見つめて”10分だ”と告げた。

「10分で話を済ませろ。出来るか?」

「了解。それだけあれば足ります」

寝起きすぐ使えるようにと、机の上に置いていた櫛を西蔭さんが手渡してくれる。
だけど、今からの話をするのに『身支度を整えながら、片手間に』というのも気が引けた。櫛を受け取り、そのまま話を始めることにする。

「やっぱり一星充くんのことで、少し気になることがあって」

「試合に出場しない限りは正確なデータは取れないだろう。今は気になるかも知れないが」

「違う、選手としてじゃなくて、ひとりの人間として気になるんです。……だってあの子、昨日の試合開始前に”この試合、日本は必ず負ける”って言ったかも知れない」

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(プロフ) - 翡翠さん» 初めまして、第一幕を最後まで読んで頂きありがとうございます!ゆっくりスピンオフの方も進めていきたいですね、本編とは違った雰囲気の3人を書けたらなと思っています!コメントありがとうございました! (2019年10月6日 8時) (レス) id: be32126b2e (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - ういさん» 初めまして、第一幕に最後までお付き合い頂きありがとうございました!沢山ある作品の中で、ういさんの楽しみになれていることが作者としてとても嬉しい限りです。お気遣いまで本当にありがとうございます、引き続き更新頑張りますね!コメントありがとうございました! (2019年10月6日 8時) (レス) id: be32126b2e (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 裕大@受験生のため低浮上さん» 初めまして、最初から読んで頂きありがとうございます!テレビ電話越しや西蔭さん経由でもあの甘やかしようなので、日本代表合流後は更に!と書いている本人もドキドキしていたりします……!これからもお付き合い頂けたら嬉しいです!コメントありがとうございました! (2019年10月6日 8時) (レス) id: be32126b2e (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - アオさん» アテナの羅針盤、響きがそっとお気に入りです。笑 第二幕では野坂さんと主人公の出会い、過去の関係、主人公の目が目覚めた過去に少しずつ触れられると思いますので、楽しんで頂けたら嬉しいです! (2019年10月6日 8時) (レス) id: be32126b2e (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - 初めまして!とっても楽しく読ませて貰っています!王帝月載宮スピンオフ楽しみにしてます! (2019年10月6日 0時) (レス) id: 0bbffb7c2b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2019年8月16日 12時

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