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episode18 Side Y ページ18

試合の流れを確認し終えて、改めて今試合を振り返ってみる。選手ひとりひとり、そしてチーム全体。

多様な個性を持つチームメイトの集まりだ、噛み合わないところが数箇所あったっておかしくはない。そう思っていたけれど、綺麗にバランスの取れた11名だった。

「見た目に反して切れ者だよね、あの監督。無名の彼らをFF優勝という名誉に導いただけはある」

メンバーの個性も鬼道さんの指揮も最大に生きる、絶妙な采配。
ヒロト君が豪炎寺さんの代わりに入った後もその調和が乱れることはなかったから、急な事態にも難なく対応できるだけの柔軟さもあるみたいだ。

それに対してAは”そうだね”と気の抜けた、上の空みたいな返事。

とぼけているようにも見えて、じれったい。

「君も気付いたんでしょ、監督の企みに」

この試合を全て見通した君が気付かない訳なんてないのに。
掛けられた発破をAは気に入らない、とでも言いたそうにつんと唇を尖らせた。

『てっきり、その辺りにいた5人を適当に集めて使い走らせたのかと思ってたんだけど。これはどうやらご丁寧にひとりずつ指名したんだろうね』

彼女は細い指を1から5まで数え折った。
その指先はまるで竪琴を奏でるかのように滑らかに、静まり返った空気をふわりと揺らす。

『そして、その5人全員が今試合のスターティングメンバー。これだけなら偶然でもねじ通せる。やや強引には思えるけれど』

「でも偶然ではなかった。この5人は、韓国代表の猛攻を見事に軽々とかわしてみせていたね。無敵ヶ原富士丸君のプレイによって目が慣れていた__いや、慣らされていたからか」

ここまで全て、仕組まれたことだったんだ。あの監督の手によって。

「不可解な話、1番重要な報告。あの日君はそう言ってた。まさかこれが対韓国戦への対策だなんて露ほども思わなかっただろうね。あの型破りな監督にまんまと踊らされたのは、流石の君でも悔しかったんじゃない?」

『……避けようとした話題を掘り出さないで』

珍しく悔しさを露にするAに、僕は意地悪くも口元を緩ませた。
できるならこの表情をこんな液晶越しではなく、この目で直接見たかった。なんて、そんなことを思ってしまう。

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(プロフ) - 翡翠さん» 初めまして、第一幕を最後まで読んで頂きありがとうございます!ゆっくりスピンオフの方も進めていきたいですね、本編とは違った雰囲気の3人を書けたらなと思っています!コメントありがとうございました! (2019年10月6日 8時) (レス) id: be32126b2e (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - ういさん» 初めまして、第一幕に最後までお付き合い頂きありがとうございました!沢山ある作品の中で、ういさんの楽しみになれていることが作者としてとても嬉しい限りです。お気遣いまで本当にありがとうございます、引き続き更新頑張りますね!コメントありがとうございました! (2019年10月6日 8時) (レス) id: be32126b2e (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 裕大@受験生のため低浮上さん» 初めまして、最初から読んで頂きありがとうございます!テレビ電話越しや西蔭さん経由でもあの甘やかしようなので、日本代表合流後は更に!と書いている本人もドキドキしていたりします……!これからもお付き合い頂けたら嬉しいです!コメントありがとうございました! (2019年10月6日 8時) (レス) id: be32126b2e (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - アオさん» アテナの羅針盤、響きがそっとお気に入りです。笑 第二幕では野坂さんと主人公の出会い、過去の関係、主人公の目が目覚めた過去に少しずつ触れられると思いますので、楽しんで頂けたら嬉しいです! (2019年10月6日 8時) (レス) id: be32126b2e (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - 初めまして!とっても楽しく読ませて貰っています!王帝月載宮スピンオフ楽しみにしてます! (2019年10月6日 0時) (レス) id: 0bbffb7c2b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2019年8月16日 12時

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