【ツルネ】ハバタケ 〜The Lost Memory〜

42.矢渡し ページ45

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｢……あ、兄？｣


滝川さんのお兄さんとかいう人がいた。しかも、微妙にお高いカメラを引っさげて。
いやあの、なんか雰囲気が微妙におっさん臭いというか……しかも、ぎっくり腰の経験者って、何歳なの……？


｢ねえ、あのニノン製の一眼の人、本当に滝川さんのお兄さんなの？ 言っちゃ悪いけど、うさん臭いっていうか……｣

｢……似てないよね、全然｣

｢うん……｣


山之内くんとひそひそ話していると、竹早くんの声がかかった。


｢始まるよ｣





滝川さんの後ろに続いて、鳴宮くんと小野木くんが出てくる。

3人とも普段と違う、黒い羽織を着ていた。それだけで、雰囲気が引き締まる。


小野木くんは滝川さんの後ろに付き従い、鳴宮くんは垜の隅の方へ。


滝川さんは弓と、真っ白い羽のついた矢を1本持っていた。あれがいわゆる、｢白羽の矢｣というものか。


滝川さんは、立ち位置につくと、上衣の左袖だけを脱ぐ。
そして、ゆっくりと弓を構え、射る体勢に入る。



ゆっくり、ゆっくりと。







そして、弦音が響く。









愁くんの射が、時間を止め、周囲を制するなら、滝川さんは空気を自分のものにして、皆を引きつける射、かな。
空気を自分の眷属のように身にまとい、流れを作る、みたいな。

あくまで、私の主観だけど。




似ているようで、こういう綺麗な射は1人ひとり違って見える。とても個性的で美しい。そんな射を見るのが、私は大好き。
それに、綺麗な射を｢見た側｣の印象も、見る人によって変わるんだ。1人ひとり違う感想を、印象を、言い合うのもおもしろい。

こういうことに気づいたのは、中1だったっけ。





中1かぁ……。
あの頃は、まだ楽しかった。


……そんなあの頃に戻れたら、なんてね。




ーーーー




その日、女子｢は｣普通に練習した。


一方の男子は、矢取り、記録、掃除……その他、雑用ばかり。

男子は団体戦もあるってのに、何のための合宿なんだよ。


他に理不尽といえば、滝川さんが、なぜか私を使い走りにしたことか。コーヒー買ってきてくれって言われた。めんどくさかった。
あと、｢昼ご飯しか手伝いませんからね！｣って言ったのに｢今日だけでいいから｣って1日目の夜ご飯まで作らされる羽目になった。


まあでも、代わりに｢2日目の夜はご主人様チームに入れろ｣って訴えておいたけど。


だから私は夕方、厨房にて、


｢えっと、夜ご飯は、カレー？｣

｢ああ、そうだ。サラダも10人分、頼んだぞ｣


ええぇ、サラダまで……と肩を落とす羽目になったのだった。

43.小さなシェフが大わらわ→←41.そして、合宿当日

• 金　運: ★☆☆☆☆
• 恋愛運: ★★★☆☆
• 健康運: ★★★★★
• 全体運: ★★★☆☆

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あずきいろ

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おみくじ結果は「末凶」でした！

今日の弓道男子

如月七緒

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