【ツルネ】ハバタケ 〜The Lost Memory〜

2.弓道？ ページ3

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｢あとはボールの回転とか、それをどう対処するかとかを瞬時に考える、かな｣

｢へえ、そういった所で奥が深いとは知らなかった。面白いね｣


にっと笑って人差し指を立てると、梨可はまたしても優しい言葉を返してくれる。ちょうど教室に着いたところだったが、嬉しくって、席についても話を続ける。


｢えへへ、ありがと。
ところで、梨可は中学何かやってたの？｣


すると、梨可の表情がどこか、輝いた。


｢部活じゃないけれど、弓道習ってるんだ｣

｢えっ、弓道！ 武道やってるの！｣


つい身を乗り出してしまう。はっとして姿勢を直すと、梨可は苦笑しつつも、


｢Aも武道、やってるの？｣


と聞き返してくれた。


｢うん。私はね、空手やってるんだ！｣


どうやら、高校最初の友達は、とても優しい人みたい。


と、ここで担任の先生が教室に入ってきて、またもや会話は寸断されてしまった。




ーーーー




風舞高校は文武両道の校風で、部活動勧誘も盛んである。

入学式とホームルームが終わった私は、その勧誘の声が響く中を、1人で歩いていた。



｢サッカー部！ サッカー部どうですか！｣

｢バレー部、入りませんかー！｣


そんな声に気を取られていた私は、


────ゴンッ

｢あたっ｣


誰かにぶつかってしまったらしい。
顔を上げると、私のすぐ横にいた人が同じように顔を上げた。赤みがかった髪で、少し怖い雰囲気の男子だ。


｢すっ、すみませんでしたっ!!｣


睨まれた気がして、反射的に頭を下げる。


｢…………悪かったよ｣


相手は予想に反して、ぶっきらぼうながら優しい人らしい。睨まれたけど、でもちゃんと謝ってくれた。


｢あんた、弓にデコぶつけただろ。痛くねえか｣

｢だ、大丈夫です！ そちらは大丈夫でしたか？｣

｢ああ、頭ぶつけたくらいじゃ壊れねえよ｣


初対面なのに、ぶつけた私の頭を心配までしてくれて、なんか、すっごく優しい人だ。



……って、あれ？ ゆ、弓？


返事したあとで今さらながら見てみると、その人は長い袋に入った棒みたいなものを背負っていた。


へえ、これが弓か。弓道部の人なのかな。弓ってこんなに長いんだ、意外……。






……って、あれれ？ 風舞って、弓道部無くない？


1人で首をひねっているうちに、その人は私の前から立ち去ってしまった。視線を前に向けるとその人が、似たようなものを背負った“ザ･陽キャ”な男子に


｢あ、かっちゃん！ どこ行ってたのさ〜？」


と言われていた。


ということはお友達だろうか。
申し訳ないけど、気になるしちょっと聞き耳を立ててみよう。

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今日の弓道男子

如月七緒

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