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008:Re: ページ9

「おばさん本当にその歌好きだねー」
「…好きなのかなー」
「好きだから四六時中聞いてるんだろ」
「…ま、そうかもね。ジュネ、その色よりこっちの方がいいよ」
「おばさんさ、スタイリストだったんじゃないの?」
「まさか」





この子は毎日どこへ行っているのだろうか?

聞いちゃいけないから聞かないけど。

時々 びっくりするぐらい張り切った格好して

見事に空回りで笑えるけど

直してあげながら 自分でも思う時がある。

こういう事を職業にしていたのかもしれないって。

だけど 一方で

韓国語も普通にスラスラ話せるから

語学を教える先生の可能性もある。

まぁどちらにしても

まともな職業に就いていたと信じたい。





パスポートに書いていた住所や電話番号

調べてみたらどちらもとっくに解約されていて

結局 自分への手がかりにはならなかった。

そっか、福岡に帰って戸籍を調べてみよう。

そんな当たり前の事を思いついたら

心が少し軽くなって

結局まだ 福岡へは行っていない。

そのうち全部思い出すんじゃない?

ジュネはそう言う。

私も そういう気がしている。





一度ジュネに聞かれた事があった。

【佐々木さんとジョセフ】という名前。

その時 ズキンと頭が痛んだけど

結局分からないまま。

私にこのハリーウィンストンをくれたのは

佐々木さんという日本人なのか

ジョセフという外国人なのか

はたまた佐々木ジョセフという…ハーフなのか。





「あ…リプ来てる」
「ん?」
「何でもない、インスタの話」
「インスタやってるんだ」
「最近ね。もし記憶が戻ったら、今の記憶を忘れてしまうかもしれないから」
「え?」
「そういう人がいるんだって」
「まじかよ」
「分んないけど。でも、今の生活だって忘れたくないから」
「…」
「あ、間に合わないよ」
「うわ、マジだ」





All of me.

どうしてこの歌を聴いていると落ち着くのだろう。

目を閉じるとぼんやりと見える

夕方の太陽に照らされた尾翼





ーAー





私の名前を呼ぶ 声。






「おばさん」
「ん?あ…!」
「変な顔!」





ジュネは子供だ。

自分のスマホで私を撮って

ニカっと笑って出掛けて行った。

一人になった部屋で

ドキドキしながらインスタを開いた。





ーRe:All of me.
僕もいつも聴いています。





「Re:って…メールみたい」





その不思議なリプに

どこか懐かしさを感じて

胸がズキンと疼いた。

009:まさか CM→←007:寝言 JN



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作成日時:2017年5月20日 0時

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