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048:待ち合わせ ページ49

-僕はチェックインしてくるので、1時間後にここで待ち合わせしましょう。





チャンミンは私の荷物を持って

スタスタと歩いていく。

取り残された私は

しばらく そこに佇んで

今にも雪が降り出しそうな空を見上げた。

ふと視線の先に柔らかい灯りが見えて

そーっとそのお店を覗くと

この街とは少しかけ離れた雰囲気を持つ女性が

私を見てニコリと笑った。






「…綺麗」





天井まで所狭しと並べられた

色とりどりのキャンドル

思わずため息が漏れた。





「はい、どうぞ」
「え?」





女性は笑顔のまま

ポトンと一つのキャンドルを

私の掌に乗せた。





「これは…」
「好きでしょ?」
「え…」





淡い紫とオレンジのグラデーション

不思議な色のキャンドルは

一瞬で私を虜にした。





「あの…おいくらですか?」
「さっきの人、彼氏?」
「・・・」
「もしかして、ご主人?」
「・・・」
「彼は、これかなー」





もう一つのキャンドルを

私の掌に乗せながら

女性はまた笑った。





「いい旅を」
「あの…お代…」
「いいの、お祝いだから」
「お祝い…?」





ごめんね、16時で閉店なの。

お店の紙袋を手渡しながら

女性はそっと私の肩に手を置いた。





結局 プレゼントされたって事なのだろうか・・・





不思議な気持ちのまま

知らない街を歩いてる。

待ち合わせの時間まで30分ぐらいはある。

もう少し先まで歩いてみよう。

まるで 何かに導かれるように足が勝手に動く。





「うわ…」





大きな海が見えてきた時

それが海じゃなくて 湖だと示す看板が目に入った。

なぜか 目の奥がじんわりと温かい。

気付いたら 涙が零れそうになっていた。





「知ってるのかな」





記憶とは違う部分で感じているのだろうか

ここが 良く知っている街だという事を。





「どこに行ってたの?」
「この先に湖があった」
「あれ、湖なんだ」
「私も海だと思ったけど、湖なんだって」
「ふーん」





待ち合わせ場所で待っていたチャンミンに

プレゼントされたキャンドルを渡した。

これ、まるで僕みたいだ。

ポツンとそう呟いて

嬉しそうに顔を綻ばせた。





「さぁ、どこに行きますか?」





彼がそう言った瞬間

グーっと私のお腹が返事をして

私たちは2人で笑った。

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作成日時:2017年5月20日 0時

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