All of me. (ページ39)

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038:誤魔化しきれない　CM ページ39

咄嗟に掴んで腕。

戸惑うAの目を見て

我に返って僕は

このままじゃ誤魔化しきれない想いが溢れそうで

そのまま寝室へ逃げた。

3か月前のあの朝

この寝室で当たり前に愛し合った記憶

僕に残っているその記憶を

恨んでしまいそうになる。

温もりも感触も

僕の名前を呼ぶ声でさえ

今僕を締め付けていく。

「どうして忘れてしまったんだよ…」

一緒にいるだけで結局何もできない。

代わってあげる事も

一緒になって忘れてあげる事も

僕は結局何もできない。

自分があまりに無力だという事実を叩きつけられたのは

もう何度目だろう。

もしこのままAの記憶が永遠に戻らなかったら？

果たして

婚約者という肩書を持って

Aを縛り付け続ける事が

許されるのだろうか。

Aを苦しめる事になるのではないか。

目を背けたくなる絶望的な未来ばかりを想像して

結局一睡もできなかった。

「おはよう…」

リビングのﾍﾞｯﾄﾞで眠るAの寝顔が

僕の心を写しているかのように

少し悲しそうに見えた。

「…行ってきます」

柔らかい髪に触れる事も

抱き締めることも

ｷｽすることも

今の僕には許されない。

Aを求めて軋む心が

僕を侵食し尽くしてしまう前に

どうか…

「僕を…思い出して」

このドアを閉めたら

もう会えなくなるかもしれない。

そんな恐怖を握り潰すように

ぎゅっと拳に力を籠めた。

「寝てないのか？」
「…問題ないです」
「答えになってない」
「一晩寝ないぐらいで倒れたりしません」
「30分だな…寝て来い」
「大丈夫です」
「早く行け」
「…すみません」

今日は通しでリハなのに

こんなんじゃﾌﾟﾛとも言えない。

情けなさを引きずって

控室のｿﾌｧｰに横たわった。

ﾕﾉﾋｮﾝの鼻歌がいい子守歌になったのか

目を閉じると

ずっしりと重い睡魔に飲み込まれた。