All of me. (ページ35)

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034:賭け CM ページ35

夕暮れの海をバックに

始まったﾊﾟｰﾃｨｰ

ｵｰﾅｰと奥さんも一緒にとお誘いしたのに

2人はｲﾀﾘｱﾝを経営している友人の店に行くと出かけてしまった。

「美味しい…」
「そりゃ、Aの大好物ばかりだもの」
「…ありがとうございます」

Aは昔から好きな白ﾚﾊﾞｰのﾊﾟﾃを

美味しそうに食べている。

「美味しい？」
「うん…美味しい」

隣に座る僕を見上げて

嬉しそうに笑った。

ﾌｫｰｸやﾅｲﾌ、ｸﾞﾗｽの持ち方ですら

昔と全く変わっていない。

「久しぶりのﾗｲﾌﾞはどうだったの？」
「最高だったよ。ちょっと俺音外しまくりだったけど」
「あは…そっか。でも、良かったね」
「うん。幸せだった」

ﾕﾉﾋｮﾝと遥ﾇﾅが

3日ぶりの再会を楽しんでいる。

Aは目の前の2人を少し恥ずかしそうに見ている。

「Aどうした？」
「え…いえ」
「もしかして、照れてる？」
「…だって……」

ﾕﾉﾋｮﾝはﾇﾅと一緒にいると

本当に甘えん坊だから。

今もﾇﾅの肩を抱いたまま

ぴったりとくっついている。

「ﾕﾉ、食べにくいから少し離れて」
「むーり」
「こっちがむーり」
「食べさせてあげる」
「やめて」

僕にとっては見慣れた光景だけど

記憶を失くしているAには

刺激的かもしれない。

「A、記憶を失くすってどういう気分？」
「ﾕﾉ!無神経すぎるわ」
「だって、Aが記憶戻したら今の気持ち忘れるんだよ」
「え？そうなの？」

Aは少し顔を赤らめながら

ｸｽｸｽ笑っている。

「正直…不安というより、覚めない夢を見てるみたいです」
「なるほど…」
「時々ほんの小さな断片が蘇る時は…頭が割れるように痛くて結局それ以上は思い出せません」
「そっか…よくﾄﾞﾗﾏとかで、記憶を失くした場所に行けば思い出すみたいなやつあるじゃん」
「ああ、そうですね…」
「行ってみるか？福岡」
「え…」

まったくﾕﾉﾋｮﾝは

僕がどうやって切り出そうとしている事を

あまりにもｻﾗﾘと口にできるから

ある意味尊敬してしまう。

「行きたい…かも」
「よし、決まり」

さすがに心配だから私も行くと

遥ﾇﾅが慌てている。

僕は少しだけ胸を撫でおろしていた。

もしかしたらの期待が膨らんで行く。

そんなに簡単ではないかもしれないけど

だけど賭ける価値は十分にあるのだから。