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031:セピア ページ32

「ああー私いつもこうなっちゃうんです」
「うん…知ってる」
「え」




いつもこうなちゃうんです

その自分の言葉と同時に

セピア色の風景が頭を過る。





「Aちゃん?」
「…大丈夫です」
「ちょっと上で休んでて?ジョセフがいるから」
「すみません」





蘇る景色は

ここの海とそっくりだった。





「ジョセフ…ここにいたの」





人が暮らせるような部屋。

窓際のソファーに

お昼寝するジョセフの隣

目を閉じる。

波の音が心地いい。






-記念に…写真いいですか?






「え…」





この声………。

慌てて以前の自分が使っていたというスマホをスクロールする。





「あ……った」





そして見つけた1枚の写真。

どれぐらい前になるのかは分からないけど

遥さんと私が肩を並べてぎこちなく笑っている。





そして 潮風と

夕方のオレンジと夜の藍色が彩る薄紫の空。





「この空の写真は…ここの海…それとも」





「A、ただいま」
「あ…」





顔を上げたら

チャンミンさんが私を見ていた。

雪が降りそうだよ

そう言って

ジョセフを優しく抱き上げる。





「何を見てたんですか?」
「…あの…これ」
「あ、いつの間にこんな写真撮ったんですか」
「…わかりません」
「もしかして、一人で行ったと言ってたあの時かな」
「…」





懐かしいね、遥ヌナこの時は少し髪短いね。

そう言って

ゆっくり写真フォルダをスクロールする美しい指先を見ていた。





「もしかして見惚れてます?」
「え?」
「Aは僕の手が好きだから」
「そ、そんなこと…!」
「そんな事ありますよ?昔からずーっと」





クククと笑って

チャンミンは自然と私を抱き締めながら

耳元で囁いた。





「会いたかった」





ぽーっとなって

耳まで熱い事に気付いた時

チャンミンさんが

またクククと面白そうに笑っていた。





「今日はどんな話が聞きたいですか?」
「…」
「何でも話しますよ」
「じゃぁ…」
「うん」
「一番目のデートの話が聞きたいです」
「…了解」





チャンミンさんを見ると

胸が締め付けられるような感触に襲われる。

何も思い出せないのに

まるで記憶の片隅から

波のように何かが押し寄せてくるみたいだった。

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作成日時:2017年5月20日 0時

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