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028:自然と ページ29

突然現れたジュネという男の人。

彼は 私を助けてくれた人らしい。

随分年下に見えるけど

私の事を呼び捨てにしたり おばさんと呼んだり

どちらも嫌な気にならないから

尚更不思議だった。

チャンミンさんとの始まりの海

砂浜で遊ぶジュネとジョセフを見ていると

彼も他人には思えなかった。

もしかして私には弟がいるのかもしれない。

何となくそう思った。





「ハリーって何?」
「いいの!こっちの話ー」
「ふーん…」
「まだ思い出そうとすると頭痛い?」
「…時々、でも何も思い出せない」
「そっか…親の事も?」
「…そうだね」
「前も言ってたけど、福岡で本格的に戸籍とか調べたらいいじゃん」
「うん…」
「ご両親は福岡だし、会いにいけば何か思い出すかも」
「…」
「でもチャンミンさん何があっても離さないって感じだもんな…おばさんが福岡行くとしたら半年後ぐらいかもね」





彼がお土産に持ってきてくれたハンバーガーがとても美味しくて

どこで買ったのと尋ねたら

家の近くの店で、おばさんが好きなやつだよって

笑顔で教えてくれた。





「これ、持ってきたんだ」
「…スマホ?」
「あのカフェに置きっぱなしだったみたい」
「…」
「これは最初に記憶を失くした時に持ってたスマホ。おばさんはしょっちゅう写真撮ってた」
「写真…?」
「そう、今の記憶を失くした時に…忘れたくないからって」





少しだけ寂しそうな顔で

彼はまた笑う。





「私が記憶を戻したら…またアナタを忘れる可能性あるのかしら」
「9割は忘れちゃうんだろうね」
「…」
「その時はまた初めましてで登場してやるよ」





そろそろ仕事に行くよ

そう言って ジーパンについた砂を払って

彼は立ち上がった。





「ジュネ」
「ん?」
「Tシャツの色、白の方がいいと思う」
「早く言ってよー。そうだ、毎朝今日のコーデって感じでLINE送るからアドバイスしてよ」
「いいよ」





私はただ

ずっと会えなかった弟に会えた。

そんな気分でいた。





「じゃね、ソユン」
「ちょ、呼び捨て?」
「いいじゃんもう知り合いなんだし」
「ただの顔見知りです」
「じゃ、またねー」





ソユンさんと同じ歳ぐらいだろう。

何だかお似合いで微笑ましい。





さっき

あまりに自然に彼の名前を呼んでいる自分が不思議だった。

もしかしたら

こうやって取り戻していくのかもしれない。

だったら、いつか

チャンミンさんの事も

自然に思い出せるのだろうか。

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作成日時:2017年5月20日 0時

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