好きじゃないよ、絶対 (ページ23)

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檜山くんに傘を返されたのはその後だった。
部活が終わるくらいの時間。
日誌を書かないといけなくて居残りをしていた時。
1時間目から3時間目まではずっと睡魔と戦っていたから何をしたか全く覚えていない。
それに誰が遅刻したかなんて分かるはずがない。
入学してから何回も日直をしてきたが、日誌を書くことには慣れない。
中学生の時はなかったのに。

下校のチャイムが鳴ったのにまだ書き終わらない日誌に嫌になってメモ欄にぐちゃぐちゃの線を書き始めた頃、檜山くんが戻ってきた。

「これ傘、ありがとう。」
『あ、ごめんね。こんな柄で。』
「別に、これなかったら帰れなかったし。」
『なら、よかった。』

机の中に忘れ物がないかチェックして檜山くんは帰ろうとしていた。

『じゃあ、また明日。』
「それ、終わんの？」

それ、とは日誌のこと。
こんなの終わるはずがない。

『全然終わらなくて、』
「1時間目は古文、動詞の活用。2時間目は生物基礎、植生。3時間目は地理、アフリカ大陸の文化。じゃあ、帰る。」
『ありがと、』

ありがとうを言い終わる前に帰って行った。

檜山くんに教えてもらったことを一言一句間違えずに書ききって担任に提出しに行くと、職員室にはもう担任はいなかった。
そういえば今日は早く帰ると言っていた気がする。
担任の机に日誌を置いてもらった。
下校時間を過ぎていたから、早く帰れと会う先生全員に言われた。
走って自転車を取りに行って走って門を出た。
こんなに下校に急いだのは初めてだ。
日誌に時間をかけすぎた。
日直の日くらいはしっかり授業を受けようと思った。