【ωrωrd!】踏切の向こう側【短編集】

仮面家族/shp ページ32

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数ヵ月前まで、私に自由はなかった。
家にずっと閉じ込められて、ただひたすら子どもをあやすばかり。
元より望んで作った子どもではない。あの子の父親が私との繋がりをより強固にするために無理やり作った子だ。
そんなあの子がかわいそうで、そして腹に宿しているうちに母性が湧いてきて、この子を連れてやっとの思いで逃げ出して、今は貯金を崩してなんとか生活している。まだ三歳のあの子から父親がいないことに関して訊ねられたことはないが、母親しかいないことに寂しがっているのは感じとれる。
鍵穴に鍵を差し込んで回す。スーパーへの買い物だけだしと置いてきたあの子は良い子に留守番を出来ていただろうか。

「ただいま」
「おかえりなさい！」

元気な笑顔であの人と同じ茶髪を揺らしながら、我が子は玄関まで来る。

「ママ、今日はひさしぶりにパパといっしょにいれるね！ よかったね！」
「……え？」

聞き間違えかと思って訊き返そうとしたら、我が子のでも私のでもない足音が聞こえてきた。

「おかえり、ママ」
「あ……なんで……」

三日月の形に口を歪めて、ショッピはこちらに向かってくる。口は笑っているのに、目は黒く淀んでいるのが分かる。そして我が子には優しい父親の笑顔で話しかけた。

「帰ってきたばかりであれやけど、パパはちょっとママと行かなきゃいけないところがあるから、またお留守番出来る？」
「うん！」

百点満点の返事をする我が子の頭を撫でて、ショッピは私の腕を引いて外に出す。

「話はあとや」

そう言ってずんずん進んでいくショッピ。たどり着いた先は駐車場だった。何度か見たことがあるショッピの車に押し込まれ、降りようとすれば首元に手を添えられた。

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