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拍子抜け ページ32

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「…お粥、もういいですか」





聞こえた言葉にゆっくり目を開ければ、私の食べ終えたお椀とスプーンを持った玉森くんがテーブルのそばにいて。

ちょっとだけ拍子抜けな私。





「…あ、うん、ありがとう…」





再び土鍋を持って部屋を出て行った彼に、どっと身体の力が抜ける。

今までの彼の行動からしたら、絶対の絶対にキスされていたであろう行為。

それがされないとなれば、逆に気になるわけで。

……ん?

気になる……?

私、あいつのこと気になってんの…???






ーーーガチャ





「…わっ!」






突然開いた扉と再び現れた彼に思わず漏れた声。

あ、っと呟いた彼は、開いた扉をコンコン。

いや…、今頃されてもね。






「熱、もう一回測ってください」


「あ、うん…」






そう言って手渡された体温計。

ベッド下のラグに座り込んだ玉森くんは、そのままベッドに肘を付いて。

熱を測る私に視線を注ぐ。






「…」


「…」






……いやいや、

いくらなんでも見過ぎでしょ…!!!






ーーーピピピ…






取り出した体温計を手を出す彼に渡す。

体温を確認した彼は、そのままテーブルにそれを置いて。

横になるよう私を促して、少しだけ乱暴に布団をかけた。






「まだ少し微熱があるんで。このまま大人しく寝てて下さい」


「…うん」






そう言ったものの…






「…」






いや、あのですね……






「……あの、玉森くん?」


「はい?」


「…ずっと、そこにいるつもりなの…?」






ラグに座ったまま、顎をついた両腕をベッドに乗せてる彼に問う。

あなたがそこにいると寝れないんですけど…






「…だめですか?」






……そそそ、

その上目遣いはわざとなのっ……!?






「…だ、だめというか…、」


「だめというか?」


「気になって寝れない…、から…」


「…」


「…それに、風邪移しちゃうといけないし…」


「…」


「…あの、ありがとう。わざわざお粥なんて作ってくれて」


「…」


「もう大丈夫だから、気にしないで帰ってくれてもいいから」


「…」






今はブラック玉森くんのままだけど。

なんだか彼って本当は優しいのかもしれない、だなんて。

もしかしたら病んでる今だけなのかもしれないけど。

それでも、今日玉森くんが私のためにしてくれたことが素直にうれしかったの。




.

ふにふに→←鼻先5cm



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すなぎも - めっちゃ面白いです!!続きがとても気になります!更新待ってます! (2018年7月25日 21時) (レス) id: ef1e270871 (このIDを非表示/違反報告)
はじめ - 続きがとても気になります!更新待ってます! (2018年4月4日 14時) (レス) id: e3f41243e4 (このIDを非表示/違反報告)
kumi(プロフ) - 初めから一気読みしました!めっちゃ面白いですね!!ブラック玉ちゃんカッコイイ!!続きが気になりますっ!!! (2016年7月12日 2時) (レス) id: 8cddf2f951 (このIDを非表示/違反報告)
たまま - このお話のたまちゃんすごい好きです! 続きが気になってしょうがないです! 更新楽しみにしてます! (2016年2月18日 19時) (レス) id: 18ff77bab6 (このIDを非表示/違反報告)
はるる - 頑張って下さい! (2016年2月7日 22時) (レス) id: fb87ff9d5e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:K | 作成日時:2015年3月10日 21時

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