09章：接触 ページ9
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御幸(意外と簡単だったな…)
終了10分前に数学のテストを解き終え、机の上にシャーペンを置く。
ぐい〜っと背伸びしながら、恐らく1番後ろの席あるある…みんなの様子を堂々と見渡す。
御幸(アイツ…絶対諦めたな)
すでに潰された様に寝そべる倉持を見て、不思議と(数学得意なんだな…)とは思わなかった。
御幸(さてさて蔵沢は…)
目の前の席に視線を移せば、左手で頭を抱えながら、右手で書いては消してを繰り返す動きに
…ははっ、すげー必死に解いてんだろな
表情までも浮かんでくるその姿に、口元を緩ませながら窓の外を眺める。
御幸(あと5分か…)
時計を見るため前を向いた瞬間、コロンコロンコロン…と俺の方に向かって転がってきた消しゴム。
そのハプニングに、右手を浮かせたまま固まる蔵沢。
御幸(…気付いてねェみたいだな…)
足を組みながら目を瞑る先生を余所に、つま先近くに転がった消しゴムを拾い上げる。
御幸「…ほらよ」
蔵沢にだけ聞こえる様にヒソッ…と声をかけ、掌に乗せた消しゴムを前に差し出す。
前を向いたまま消しゴムを取ろうとする蔵沢の手は、上下に動きながらも空を切る。
取りやすい様にさらに前に出したその時…
＿＿ハジメテ重なり合うお互いの手…
消しゴムを受け取り、スッと引かれていった右手を無意識に目で追いかける。
ははは… 純さんが読んでた少女漫画みてェ…
そんなことを思いながらも頭の中では、1秒にも満たないさっきの出来事がしつこいぐらい自動再生される。
御幸(俺って意外とウブ…？)
意識すればするほど熱を帯びる右手に、蔵沢への気持ちを改めて認識させられる。
ビリッ…
紙が破れる音が聞こえたかと思えば、蔵沢の左手がサッ！と後ろに回り、机の上に紙切れを残していく。
何事かとソレを開けば【ありがとー！助かりました！！】の文字…
御幸(残り時間も少ねェのに、別に今じゃなくてもいいだろ…ほんと面白ェ奴)
それから数分後、教室内に響いたチャイムに天を仰いだ蔵沢が後ろを振り向く。
蔵沢「終わりました…御幸先生…」
御幸「ご愁傷さま」
蔵沢「うぅ…消しゴムさえ落とさなければ…！」
御幸「律儀な紙切れのせいだろ？」
蔵沢「紙切れとは失礼な！」
実はその律儀さにもグッとキテたり…
そんな会話をしながら回答用紙を回す右手は、まだ熱を帯びたままだった。
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作者名：華うさ | 作成日時：2016年5月20日 22時
