【CS集】共依存 (ページ9)

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(※【備考】の続き)

瑠璃が通っていた高校は、演劇部が有名だった。
毎年全国大会で好成績を残す、優秀な部だった。
勿論その分、役を貰うには、それ相応の努力をしないといけない。
だから彼は頑張った。
寝る時間も、友達と遊ぶ時間も、削れるものは、全て削った。
でも駄目だった。
彼は3年間、1回も表に出る事はなかった。

「お前演技下手だなあw」「今すぐ演劇部辞めてくれない？」「瑠璃くん運動神経良いし、運動部に入ったら？そっちの方が向いてるよ！」「遊馬先輩って、演技下手ですよね。」「瑠璃先輩！私、次の大会で主役とれたんです！…え？先輩、今回も駄目だったんですか〜？w」「遊馬、お前役者になりたいのか？…辞めとけ、演技下手なお前が進んでいい道じゃない。」「遊馬先輩って、なんで演劇部に入ったんですか？演技下手なのに。」「先輩より、後輩の僕の方が出来るんですよ？恥ずかしくないんですか？」

それだけならまだよかったんだ。

彼は中学校から高校までの6年間、芸能事務所や劇団、
ドラマや映画のオーディションを何百回も受けた。
でも1回も受からなかった。

「君の演技、真面目だね。全然ワクワクしないよ。」「演技は上手いんだけどねえ…勿体無いなあ…。」「ただ上手いだけだね。」「きついこと言うけど、やる気ある？全然努力が伝わってこないよ？」「流石にこれは酷くない？」「はっきり言うね。君、役者に向いてないよ？」「もっと頑張らないと…じゃないと一生受からないよ？」「演技下手じゃない？」「うーん…ごめんね、今回は不合格かな。」「君さ、演技に一回土下座したら？いくらなんでも酷いよ？」「高校生でこれって…。」

そして、最後に受けたオーディション。
ベタな恋愛もののドラマのオーディションだった。
「君、演技上手だね！」
そう褒めてくれた、同い年の男の子。
話を聞くと、その子は初めてのオーディションらしい。

たったそれだけだったけど、嬉しかった。初心者っぽい感じの子だけと、嬉しかった。
今日のオーディションは、いける気がした。
でも、その子の演技は…
「あのね！！僕はずっと、君のそばにいたいんだ！！…だから、僕とずっと一緒にいてくれませんか？」
自分の演技とは比べものにはならないぐらい上手で、自分にはないものばかりだった。
それで瑠璃は思い知ったんだ。
「俺には才能がない」って。