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想定以上に疲れきった身体は、思うようには動いてくれない。明日は練習が休みでよかった。
｢A、ほら｣
｢え｣
欠伸が止まらないAを見て、豪炎寺が自分の膝をぽんぽんと叩く。この仕草は……
｢来いよ｣
｢……修也の膝に？｣
｢そうだ｣
｢なにゆえ｣
｢まだ眠いんだろう｣
｢？？｣
今まで何年も共に過ごしてきて、ここまで会話が噛み合わないのは初めてかもしれない。確かに今Aは眠くてたまらないが、普通に布団被って寝れば済む。それなのに彼が頑なに膝に来いと言う理由は……
｢あ｣
｢どうした｣
｢修也、さみしかった?｣
｢……｣
そうかそうか、寂しかったのか。考えてみると、ここ数日はサッカー部員のことばかり考えていて、彼のことを放置してしまっていた。
そっぽを向いている豪炎寺を見ているとついニヤニヤしてしまう。強さの象徴のような彼が、自分を必要としてくれているのが嬉しくて堪らない。
｢えへへ｣
｢……｣
｢いたたたた｣
無言で両頬を引っ張られた。ごめんて。
それにしても、こんなにもかっこよさと可愛さが共存した素晴らしい幼なじみはいないだろう。100点満点を超えて120点プレゼントだ。
｢修也｣
｢……なんだ｣
｢好きすぎてハグしたい｣
｢………………ああ｣
ため息混じりの長い長い間を空けて許可が出たので、遠慮なく膝枕スタンバイしていた豪炎寺の胸に飛び込んだ。それなりに勢いがあったのに、特に体勢を崩すことなく抱きとめた彼はまさしく豪炎寺修也といったところか。
彼は体温が高いのでいい湯たんぽになり、くっついていると自然と眠気もやってくる。
｢はぁーぬくぬく……｣
｢呑気だな｣
一方的に抱き枕にされ、行き場のない両腕を身体に回していいものかと頭を抱える豪炎寺を余所に、Aの意識はゆっくりと遠のいた。
改めて言うことでもないが、一般的な異性の幼なじみは中学生になっても一緒に寝たりはしないし、膝枕もしないし、ハグもしない。
幼なじみとしての距離感を絶妙に間違えている、お互いに対してだけパーソナルスペースが破綻した二人。生憎とツッコミは不在だ。
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作者名：おひめ | 作成日時：2022年7月14日 17時
