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｢あの〜キャプテン｣
｢ん？ なんだ？｣
宍戸が言いづらそうに切り出す。
｢この間の豪炎寺さん、呼べないんですかね｣
途端、染岡が苛立ちをその雰囲気に滲ませた。今変わるべき、成長すべきなのはこのチームなのに、始める前からまだ入部もしていない豪炎寺を頼るのはいただけない。
Aもまた豪炎寺の幼なじみとして雷門サッカー部が彼の新たな居場所になればいいとは思っているし、彼のいるべき場所はここだという自負もあるが、一歩を踏み出すかどうかは彼次第だとも考えていた。
｢俺が本当のサッカーを見せてやる！｣
｢染岡……？｣
急に立ち上がった染岡に半田が驚いて振り向いた。……染岡の気持ちは分かる。何しろ、彼は初期のサッカー部員の中で唯一のFWだ。彼には彼なりのプライドがある。
｢豪炎寺はもうやらないんだろ｣
｢それは、わからないけど……｣
｢円堂まで、あいつを頼りすぎだ｣
｢まあ、そこは染岡の言う通りだと思う｣
｢A？｣
｢修也が入部するかしないかは別として、まずは皆でひとつのチームにならないとね｣
もし豪炎寺がチームに加わるにしても、彼一人に頼るサッカーはよろしくない。サッカーはチームプレーなのだから。
もし彼一人に頼りきりになってしまえば、昨年のフットボールフロンティア決勝の木戸川清修の二の舞になる確信があった。
何も言わない部員たちに、尚も染岡は訴えかける。
｢俺たちだって出来るさ、もっと俺たちを信じろよ！｣
ここで、タイミング悪く部室の扉が開いた。
｢みんなー、お客さんよ……何かあったの？｣
｢ああ、いや、ちょっとな｣
部室に入ってきた秋がどこか不安そうに問いかけるが、円堂は苦笑いで誤魔化す。秋は扉の外に向けてどうぞと促した。
一体誰が来たのやら……と思っていると、見覚えのある赤毛の女子生徒だった。彼女は確か、円堂が啖呵をきったとかいう雷門中の理事長の娘だったはずだ。
堂々と部室に入ってきたものの、きょろきょろと目線だけを動かして鼻を抑える。
｢……臭いわ｣
煌びやかなお嬢様にオンボロ部室の臭いは合わなかったらしい。帝国との練習試合を組ませた上、廃部騒ぎまで起こした理事長の娘。サッカー部も一筋縄ではいかないとAは呑気に欠伸をして、突如やってきた彼女の話を聞くことにした。
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作者名：おひめ | 作成日時：2022年7月14日 17時
