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教室に戻ってきた円堂によれば、雷門サッカー部はただ廃部になるよりもまずい事態に陥っていた。
円堂がAに泣きつきに来た途端豪炎寺は逃げる。とてつもない素早さだった。
｢帝国学園と練習試合か……｣
｢A〜〜俺たちどうしたらいいんだ！｣
｢どうしたらって、試合するんでしょ？｣
｢でも人数足りないし……｣
｢かき集めるしかなさそうだね。今七人だから、あと四人｣
｢四人も来てくれるかな…それにあいつらだって一緒に戦ってくれるか｣
理事長の娘に向かって帝国学園に立ち向かうと啖呵を切って戻ってきたらしい円堂は、いつになく弱気だ。
何かに悩んだり落ち込むと真っ先にAの元にやってくるのは、太陽のような彼が頼りにしてくれているようで、少し誇らしかった。だからこそついつい甘やかしてしまうのだけれど。
｢大丈夫だよ。円堂はいつも通りサッカーして、やりたいように部員をかき集めて｣
｢……いつも通り、やりたいように？｣
｢そう。円堂のサッカーは負けないから｣
笑顔で言い切ったAに円堂はぱちぱちと瞬きをした。
｢お前ってさ｣
｢うん？｣
｢なんだか天使みたいだな！｣
｢て、天使？｣
｢ありがとうA！ 元気出た！｣
よくわからないが元気が出たらしい。俺は俺のサッカーをやるんだと意気込む円堂に、その意気だと頷く。
彼は太陽だ。暗雲が立ち込めようが、圧倒的な光で突き破ることが出来る…そんなひと。だからきっと大丈夫。
｢帝国が来るまでの間、また特訓に付き合ってくれない？｣
｢円堂がそう言うなら｣
｢やったー！ お前のシュート、すっげえもんな！｣
自分の手を握りぶんぶん振り回す円堂をじっと見つめてから、Aはそっと息を吐く。
｢……もし、｣
｢へ？｣
｢もし、どうしても十一人揃わなかったら、わたしが出る。練習試合だから性別による制限もないし｣
｢え、でもお前｣
｢身体なら大丈夫。自分の限界くらいはちゃんとわかるよ｣
何より、太陽がいるフィールドで共に走ってみたい。
｢……ありがとう。でも、Aに無理はさせたくないから頑張って四人見つける！｣
｢うん、応援してるね｣
泥だらけで傷だらけで、それでいてあまりにも眩い光に、どうしようもなく惹かれるのだ。
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作者名：おひめ | 作成日時：2022年7月14日 17時
