63.嵐のあとの信頼関係2 ページ28
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今、起きたばかりの人間とは思えないその力に
逆らうことをせずに、再び丸イスに腰掛けた。
鋭い瞳は私を射抜いて...この男の本領だと思う。
まさか自分がこうして問い詰められる側になるなんて。
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「...君は席を外してくれ」
「............ええ。わかったわ」
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あまりの気迫に黙って俯くばかりの私に
埒が明かないと判断したのか、長期戦に持ち込むつもりか。
人払いをして静まり返った病室の中、上司の表情を見れば
後者であることは間違いなかった。
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「...怖がらせてしまったかな」
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突然、柔らかくなった雰囲気に顔を上げたのがマズかった。
ぐいっと引き寄せる力を利用されて
降谷さんが起き上がる代わりに私が前につんのめる。
床に突いた膝が少し痛んで。
ガシャンとイスが倒れる音がしても、誰も来ない。
咄嗟にベッドに肘を突いたものの
手首が掴まれたままなせいでうまく起き上がることはできず
間抜けな格好のまま、右手で項を引き寄せられた。
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「な...っ」
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責めたりしないから、言ってごらん。
頬を撫でる親指に合わせた甘い囁きは
ポアロで笑う彼を彷彿とさせたけど
優しさを含んだ微笑みに、僅かに色香を乗せた声。
だけど...私の顔を覗き込む瞳の奥は、笑っていない。
柔らかいベールで、鋭い牙を隠すのは。
降谷零でも、安室透でもない。
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「バー、ボン...」
「.........へぇ?」
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なるほど、そりゃネクタイだけで済むわけだ。
だけど今は...その対象が自分だと言うだけで涙が滲んだ。
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「......ん...の、」
「ん?」
「降谷さんのバーカ!!」
「んなっ...!?」
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急な暴言に緩んだ一瞬の隙きを突いて、距離を取る。
ぼやけていた視界が急にクリアになって
我慢してたのに流れちゃったんだなって思ったけど
落ちた涙を拭うこともせずに、ただ叫ぶ。
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「別に知りたきゃ教えますよ!今さら言ったところでなにか起きるとも思ってないし!」
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言ったところで、頭がおかしいヤツだと
そう思われるのがオチだとわかっていたから黙ってただけ。
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「私は元々、この世界の人間じゃないってだけの話ですからっ」
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未桜 - 本当大好きですこれドタイプです……。テーマ一本釣りされて参りました。ストーリーも自然だし、キャラクターの魅力がとても引き出されていました! トリップした事に現実味のある主人公へかなり感情移入してしまいました。本当に素敵な作品をありがとうございました! (2021年12月22日 0時) (レス) @page36 id: 22cb640d25 (このIDを非表示/違反報告)
キャラメル(プロフ) - 最っ高です!!!大好きな作品の1つになりました!これからも頑張ってくださいね(^^♪応援してます! (2020年6月8日 15時) (レス) id: b8ac5a9a04 (このIDを非表示/違反報告)
美咲(プロフ) - 最高… (2019年12月14日 17時) (レス) id: f6fdf86c66 (このIDを非表示/違反報告)
神と名乗る凡人 - 最高ですね!これで読むの2回目のなるんですが何回読んでも感動します。上から出申し訳ないんですが、書き方も本当にプロで出せるような文章ですごく引き込まれました。これからも頑張ってください!応援してます。ありがとうございました!! (2019年8月31日 2時) (レス) id: 5e8845cf1b (このIDを非表示/違反報告)
華蓮(プロフ) - 感動しました!!降谷零という人物が更に好きになりました!!話を読んでいて、表現の仕方?がすごく好きです、読んでいて面白かったし、キュンキュンしました!!これからも頑張って下さい!! (2019年4月30日 1時) (レス) id: 28b0b44997 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ももこ | 作成日時:2019年3月8日 16時