58.清き雨音と刑事の魂2 ページ23
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照明が落ちた瞬間。
降谷さんと尋問していた男の間に素早く割って入って
その男の両肩に両手を乗せたら
同時に持てる限りの力で体を引き上げ、地を蹴り
膝で腹を思いっきり蹴り上げた。
蹴り飛ばすためじゃない、気絶させるための一撃。
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「ぐぁ...!?」
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ごきり...と小気味のいい感触と共に
気絶した男を地面に叩きつけたら、倉庫内が再び明るくなる。
手錠をかけたら、上司が遅かったじゃないかと笑った。
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「それはこっちのセリフです。帰りが遅いから迎えに来ちゃいましたよ」
「はは、それは手間をかけたな。......風見達は」
「風見さんは、降谷さんが練っていた案を元に組織の本拠地に突入できるよう準備中です。
それから...照明を落としてくれた山田さんが、そこで入り口を見張ってくれてます」
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降谷さんの手錠を外しながら、現状を報告する。
それにしても...埠頭の空倉庫とは。
黒の組織の残党も、随分とテンプレ通りに事を運ぶもんだ。
今時、二流のヤクザ映画でも滅多に見ないロケーションだぞ。
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「この倉庫の周辺に男の仲間がいないことは、山下さんが下調べ済みです。
こいつ...よっぽど自分の手柄にしたかったんでしょうね」
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降谷さん曰く、警察学校時代から出世欲が強かったそうだ。
だけど強者揃いの同期の中に埋もれてしまったと。
気の毒とはいえ...犯罪に手を染めていい理由にはならない。
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「よし...外れました......身体は大丈夫ですか?」
「...ああ」
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ぐっ、と身体の機能を確かめるように拳を握った降谷さんが
助かった。ありがとう。
そう微笑んだら...急に、涙が出そうになる。
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「...降谷さんが諦めないでいてくれたからですよ」
「............約束、したからな」
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信じていたよと笑う降谷さんに手を差し出せば
今度は、小指なんて頼りないものじゃなくて
しっかりと...お互いの手を取り合った。
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「ぅあ...っ!!」
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穏やかな時間を、入り口から聞こえた悲鳴がかき消す。
忘れていた...ここがコナン界だってことを。
雨に混じった火薬の匂いに、入口を振り返れば。
山田さんが地面に伏していた。
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未桜 - 本当大好きですこれドタイプです……。テーマ一本釣りされて参りました。ストーリーも自然だし、キャラクターの魅力がとても引き出されていました! トリップした事に現実味のある主人公へかなり感情移入してしまいました。本当に素敵な作品をありがとうございました! (2021年12月22日 0時) (レス) @page36 id: 22cb640d25 (このIDを非表示/違反報告)
キャラメル(プロフ) - 最っ高です!!!大好きな作品の1つになりました!これからも頑張ってくださいね(^^♪応援してます! (2020年6月8日 15時) (レス) id: b8ac5a9a04 (このIDを非表示/違反報告)
美咲(プロフ) - 最高… (2019年12月14日 17時) (レス) id: f6fdf86c66 (このIDを非表示/違反報告)
神と名乗る凡人 - 最高ですね!これで読むの2回目のなるんですが何回読んでも感動します。上から出申し訳ないんですが、書き方も本当にプロで出せるような文章ですごく引き込まれました。これからも頑張ってください!応援してます。ありがとうございました!! (2019年8月31日 2時) (レス) id: 5e8845cf1b (このIDを非表示/違反報告)
華蓮(プロフ) - 感動しました!!降谷零という人物が更に好きになりました!!話を読んでいて、表現の仕方?がすごく好きです、読んでいて面白かったし、キュンキュンしました!!これからも頑張って下さい!! (2019年4月30日 1時) (レス) id: 28b0b44997 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ももこ | 作成日時:2019年3月8日 16時