57.清き雨音と刑事の魂 ※Side 零※ ページ22
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「ぐっ...!」
「......吐く気になったか?」
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ついに地面に膝を突いた俺の前に立つ
懐かしい同期の顔に、小さく息を吐く。
一度は同じ道を志した人間が、こうも違ってしまうのか。
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「は、っ......生憎だが...痛みには、強いんだ」
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そう吐き捨てるように言えば
柱に拘束された身体に、新しい傷が増える。
後ろ手に掛けられた手錠の鎖は
ガシャンと力まかせに引っ張ったところで、びくともしない。
ピッキングに使える代物がなければ金属の塊なのだから。
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一口に言ってしまえば、油断していた。
自分以上に怖い男達は紛れもなく自分の味方だし
そんな自分達にとって脅威だったヤツらとの決着はついた。
何よりも......組織を壊滅させて。
自分の代わりを任せられそうな部下達にも恵まれた今。
生きなければと必死に生に縋り付く必要もないと
後は...あいつらと同じように、いつか国のために死ねたらと
正直、思っていたことは認める。
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「分かってるだろ?これ以上、血を流し過ぎたらヤバいぞ?」
「、ぅ......どう、せ...彼女の身柄と、引き替えにするつもり...だろ」
「だから俺がお前を殺さないって思ってるなら...そいつはとんだ勘違いだな!」
「く...ぁ...!」
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その"いつか"が、今なのかもしれないと。
そう思う一方で...状況を打破するために思考を止めないのは
頭の中で、それは今じゃないとあいつらがうるさいから。
くそ...あの日、あいつとあんな約束なんかしたせいだ。
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「言え。シェリーはどこにいる」
「...死んでも、言わない...が、」
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出血と体温の低下で意識が朦朧とする中
右手の小指がぴくりと動いた。
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「簡単に、死んでやるつもりも、ない」
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だから、早く来い。
不敵に笑って見せた俺の頭上で、照明が落ちた。
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「動くな!!!」
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派手に開いた倉庫の扉から
雨の匂いが、入り込んでくる。
次に照明が倉庫内を照らした時には
さっきまで自分を見下ろしていた同期の顔が
地面に叩きつけられていた。
ああ、直々に教えたかいがあったな。
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「.........遅かったじゃないか」
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未桜 - 本当大好きですこれドタイプです……。テーマ一本釣りされて参りました。ストーリーも自然だし、キャラクターの魅力がとても引き出されていました! トリップした事に現実味のある主人公へかなり感情移入してしまいました。本当に素敵な作品をありがとうございました! (2021年12月22日 0時) (レス) @page36 id: 22cb640d25 (このIDを非表示/違反報告)
キャラメル(プロフ) - 最っ高です!!!大好きな作品の1つになりました!これからも頑張ってくださいね(^^♪応援してます! (2020年6月8日 15時) (レス) id: b8ac5a9a04 (このIDを非表示/違反報告)
美咲(プロフ) - 最高… (2019年12月14日 17時) (レス) id: f6fdf86c66 (このIDを非表示/違反報告)
神と名乗る凡人 - 最高ですね!これで読むの2回目のなるんですが何回読んでも感動します。上から出申し訳ないんですが、書き方も本当にプロで出せるような文章ですごく引き込まれました。これからも頑張ってください!応援してます。ありがとうございました!! (2019年8月31日 2時) (レス) id: 5e8845cf1b (このIDを非表示/違反報告)
華蓮(プロフ) - 感動しました!!降谷零という人物が更に好きになりました!!話を読んでいて、表現の仕方?がすごく好きです、読んでいて面白かったし、キュンキュンしました!!これからも頑張って下さい!! (2019年4月30日 1時) (レス) id: 28b0b44997 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ももこ | 作成日時:2019年3月8日 16時