52.静かな雨音と公安の男 ページ17
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「また雨かよ...新年早々、不穏だよなぁ」
「そんな風に考えるのは職業病ですね」
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運転席で山田さんがボヤくのを茶化したものの
確かにこれでは気が滅入るなぁと私もまた、ため息をつく。
近所の神社に初詣に行った日はあんなに晴れてたのに。
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「今、追ってる案件のせいってのもあるな」
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山田さんが言う案件というのは、連続殺人事件。
大晦日に一人目の被害者が発見されてから
この二週間の間で、既に五人。
被害者にあまりにも共通点がなさすぎるもんだから
組織的な動きの可能性も考えて、私達も追うことになった。
今は、四人目の被害者について調べて回ってるところだ。
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「...だからさっさと解決しようぜ!」
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山田さんが車を発進させたら被害者の自宅を後にする。
次の目的地を伝えながら、ふと外を見れば
やっぱり雨は静かに振り続けていて。
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「辛気臭い顔してんなって!」
「......胸が...痛むんですよね」
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そう、雨は、胸が痛む気がするから好きじゃない。
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「もともと、たまに痛いなって思うことはあったんですけど...病院に行くのを後回しにしてました。
それがいけなかったんでしょう、ある日とんでもない痛みに襲われて」
「はぁ...?」
「ああ、もうダメなんだなって、諦めたあの日も...雨が降っていたんです。
視界が霞む中、ずっと窓を叩いてる雨音が聞こえ続けて...」
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パァーッというクラクションの鋭い音に、慌てて動き出す車。
ハッと我に返って山田さんの様子を伺えば
明らかに戸惑っているのが見て取れた。
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「...って感じで始まるホラー小説を読んだんですけどね?」
「...はあぁぁぁ!?」
「え、移動中、退屈かと思って......ホラーとかダメでしたっけ?」
「こっの...俺の心配を返せ!」
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お前は稲川淳二か、と呆れる山田さんに
こっちでも稲川淳二はそれで通用する人なんだと感心しながら
ごめんなさい、と心の中で謝った。
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「ったく...降谷さんがいないから不安で沈んでんのかと思ったら...」
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その言葉に、どきりと心拍が上がる。
降谷さんには...あのクリスマス以降、会っていなかった。
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未桜 - 本当大好きですこれドタイプです……。テーマ一本釣りされて参りました。ストーリーも自然だし、キャラクターの魅力がとても引き出されていました! トリップした事に現実味のある主人公へかなり感情移入してしまいました。本当に素敵な作品をありがとうございました! (2021年12月22日 0時) (レス) @page36 id: 22cb640d25 (このIDを非表示/違反報告)
キャラメル(プロフ) - 最っ高です!!!大好きな作品の1つになりました!これからも頑張ってくださいね(^^♪応援してます! (2020年6月8日 15時) (レス) id: b8ac5a9a04 (このIDを非表示/違反報告)
美咲(プロフ) - 最高… (2019年12月14日 17時) (レス) id: f6fdf86c66 (このIDを非表示/違反報告)
神と名乗る凡人 - 最高ですね!これで読むの2回目のなるんですが何回読んでも感動します。上から出申し訳ないんですが、書き方も本当にプロで出せるような文章ですごく引き込まれました。これからも頑張ってください!応援してます。ありがとうございました!! (2019年8月31日 2時) (レス) id: 5e8845cf1b (このIDを非表示/違反報告)
華蓮(プロフ) - 感動しました!!降谷零という人物が更に好きになりました!!話を読んでいて、表現の仕方?がすごく好きです、読んでいて面白かったし、キュンキュンしました!!これからも頑張って下さい!! (2019年4月30日 1時) (レス) id: 28b0b44997 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ももこ | 作成日時:2019年3月8日 16時