出久 ページ23
私と共に除かれたもう一人は、前列、先ほどからずっと不安げな表情を浮かべたままの、この物語の主人公＿＿緑谷出久。
当然、と言うべくして当然、自らの “個性” が不安なのだろう。
出久くんは、湧き上がった生徒の失言のせいで(もとよりそのつもりだったのやも知れないが)、「最下位の者の除籍処分」という重すぎる宣告に、奮い立つ者と不安を顕にする者の、後者だ。
ぞろぞろと移動していくみんなの後ろの方を、背を丸め、手のひらをじぃと見つめながら着いていく出久くん。
その鍛えられていながら頼りない肩に、ポンと手を置いた。
「ねぇ」
「っはいぃっ」
途端、ビクッと跳ね上がる肩と、裏返った返事。
「肩の力抜きましょ。強張った体じゃ思うように動けないから」
「へ……？」
強張った両肩をポンポンと、撫で下ろすように軽く叩く。
「あ、えっと……ありがとう」
まだ表情に不安は表れたままだが、少しでもその不安を取り払えたのなら、それだけでいい。
むしろ、ボール投げの二回目、爆豪くんを超える記録を叩き出した、
これくらいが丁度いいのかな。
「頑張りましょう。除籍、嫌だもんね」
出久くんに早く行こうと促すように、背に触れる。
私が指す先には、既に集まっているみんながいた。
出久くんが歩き出したのを見て、横に並んで歩く。
「最初は……なんだっけ？」
「ご、五十メートル走だよ……」
「あ、そっか。うーん、私みたいな、 “個性” を活かすべくして活かせる種目が無い人間にとってはつまらないんですよねぇ、個性把握テストって」
「え、えと……あなたの “個性” 、どういうものなの？」
名前がわからなかったのか、「あなた」という二人称を使って私の “個性” を聞いてきた出久くん。
「渡我ですよ。渡我被身子」と名乗ったあと、二、三歩先に進んでくるりと振り返る。
「 “個性” はー……内緒です。出久くんもきっとそうでしょ？」
に、と笑顔で言えば、最後の言葉で表情を強張らせた出久くん。
今後授業で戦うこともあるだろうし、誰だって不利になりたくないもんね。そう付け足せば、明らかにホッと安心した表情になる。
……うん、出久くんの課題は、感情が表情に出やすいこと。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 101人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
カナ - トガちゃんの成り代わりは私得ですね。笑更新頑張ってください。 (2019年1月29日 23時) (
レス) id: 270e06f60b (このIDを非表示/違反報告)
ふらわぁ@無理ゲーはパス。 - ツインテトガちゃん可愛い (2019年1月14日 14時) (レス) id: e44d61dba0 (このIDを非表示/違反報告)
ののいろ系女子 - 成り代わり！しかもトガちゃん！もう大好きが勢揃いで嬉しいです！更新大変だと思いますが頑張って下さい！ (2018年12月29日 1時) (レス) id: 8fb3eabd58 (このIDを非表示/違反報告)
ハムぴょん - ああ面白いぃぃ！！！とがちゃん好きだから嬉しい！更新頑張ってください！！！！！ (2018年12月17日 21時) (レス) id: e2495abf65 (このIDを非表示/違反報告)
愛と正義 - めちゃ面白いです！！ (2018年11月26日 22時) (レス) id: 270e06f60b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
