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店
「今日なんか納品多くないですかー?俺もう畳むの飽きたよぉ。」
『じゃあ、ハンギングだけでいいから、ちょっとは頑張ってよ?』
「優しい。Aさんって、誰にでも優しい?」
なにを言ってんだ。
『さあね。優しくないよ、自分のことばっかだし…』
「なに、どしたの?やっぱ今日調子悪いよね?」
『君はこのあと大学でしょ?そんなの気にしなくていいの。』
「子供扱い…」
むすっとしてしまった。
だって。納品片付けるだけでみんな優しいなら、争いなんて起きないよ。
君のおかげで少し余裕ができたから。
そのお返しをしただけ。
「これさ、聞いていい話なのかわかんなぁんだけど、Aさんってジェシーと知り合いだったりする?」
『へ?』
「いや、北斗と知り合いだって聞いて、派遣だしAさん。会ったことあるかなって。」
『…あったかなぁ。』
さらに田中くんはむすっとして、
「嘘つき。」
『も、なに?どしたの?』
ぴしっと畳まれたTシャツをストックに持ってったあと、わたしの目の前に立って、
「前、見かけた。だから、嘘なんかつくなよ。」
『…え?』
「俺、そんな頼りない?」
『だから、話が見えな、』
「Aさんのこと、俺、すんげえ気になんの。」
「だから、俺に頼ってほしいの。これってさ、好…」
『っ…ほら!!大学でしょ?上がらないと!』
わたしの大きな声にビクッとする田中くん。
ごめん、いまその先を聞きたくないよ。
「松村さんに業務のことで連絡しなきゃだし。ほら、お疲れ!またね?」
わたしは話をぶった切って、電話を持ってその場を離れた。
後ろなんか向けない。彼の目がどんなのか、さっきの一瞬でわかったの。
これ以上、巻き込めない。
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作者名:エリンギ | 作成日時:2020年7月28日 17時