・2 ページ4
まだ重い瞼を擦り、メイド服に着替える。
メイドの朝は早いのだ。
ちなみに、さとみ様は追い出した。
「ねむ……っだめだめ、私はこのお城で唯一のメイドなんだから」
そう、なぜかこのだだっ広いお城にはメイドが私一人しかいない。
と言っても、家事は王子様以外で分担しながらやっているのだが。
「____ねぇ準備できた?るぅとくんが呼んでるよ」
少し激しめに扉がノックされ、キィ……と控えめな音が鳴った。
「私が準備できていなかったらどうするつもりだったのですか、"ころん様"」
「だってさー、『今すぐ呼んでこないとお前のゲームは没収だ!』ってすごい形相で言われて……くふっ」
また特徴的な笑い声を抑えている彼は、 "青柳ころん"。
彼も王子様の側近であり、王子様とは喧嘩しながらも仲良くやっている……と思う。
「それで、王子様はなんの御用で?」
「知らなーい、どうせ愚痴か相談じゃない?」
ですよね、と心の中で相槌を打つ。
王子様にしょっちゅう呼び出されては、愚痴やら相談やらを聞かされるのだ。
「分かりました。すぐに向かいます。では」
ドアの方へ向かおうと踵を返すと、彼が「あっ」と声を発した。
「ちょっと待って」
こちらの方へ てくてくペンギンの様に歩いてくる。
すると、ふわっと彼特有の アスターのような香りに包まれた。
昔はこの香りが好きで何度も抱きしめていたっけ、なんて場違いなことを考える。
「……いつもありがと」
これが彼なりの愛情表現なのか、このハグも日課になりつつあるのだ。
「……好きだよ」
「ありがとうございます。主人に好かれるのも私の役目ですので」
毎朝同じ返しをしているが、彼はめげずに 毎日「好き」と伝えてくれる。
それはとても嬉しいことだが、なにせ思春期真っ只中の私にはどうしていいか分からない。
それゆえ、言葉遣いが堅苦しくなってしまう。
主従関係においての「好き」なのか 友達としての「好き」なのか、はたまた____
「……では」
だめだ、と思い部屋を出た。
ちょっとドキドキしてしまったのは寝ぼけていたからかな、なんて自分を納得させていた。
155人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
虹の根本付近に生息しているアイ(プロフ) - 菜々志さん» 菜々志さん ありがとうございます嬉しいです;; (2022年2月19日 11時) (レス) id: c4be3cb89b (このIDを非表示/違反報告)
菜々志(プロフ) - 高評価をもっと押させてくれぇぇぇ!!!ww (2022年2月19日 8時) (レス) @page7 id: ec6dd9f0aa (このIDを非表示/違反報告)
虹の根本付近に生息しているアイ(プロフ) - 泡沫さん» 泡沫さん コメントありがとうございます! そう言っていただけて本当に作者冥利に尽きます……(T T) 体調にも気を配りながらこれからも更新頑張ります! (2022年1月15日 15時) (レス) id: c4be3cb89b (このIDを非表示/違反報告)
泡沫(プロフ) - こんなに面白いと思った作品は初めてです…!体調にお気を付けて、そして更新も無理せず頑張ってください! (2022年1月15日 12時) (レス) @page50 id: 7687e77697 (このIDを非表示/違反報告)
虹の根本付近に生息しているアイ(プロフ) - 泡糖さん» コメントありがとうございます!わたし的に小説を書いていていちばん嬉しいお言葉、本当にありがとうございます…(泣 ) 最近寒いですもんね、体調に気をつけながら更新頑張ります!泡糖さんも体調を崩されませんようにお過ごしください✨ (2021年12月30日 8時) (レス) id: c4be3cb89b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:虹の根元付近に生息しているアイ | 作成日時:2021年11月24日 21時