王子様に仕えるのは想像以上に大変です。【黄】

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一瞬、頭が真っ白になった。


というか『シました』ってなに？

ナニをシたんだ。一体。

でも多分、昨日のことを言っているんだろう。



｢ちょっとまってなーくん、その言い方は語弊がある｣


｢なにが？Aとシたんでしょ？｣



顔を真っ青にしている莉犬様と、ちょっと悪い顔をしているななもり様が睨み合っていると、王子様が手を挙げた。



｢____その、シたって本当ですか？｣


｢まってるぅとくん、それは違うんだ。冷静になろうよ一回｣


なにをそんなに莉犬様が焦っているのか知らないが、私だけ今のところ蚊帳の外だ。




私はひとりでオロオロしていると、さとみ様が近付いてきた。



｢ごめん｣


そう一言だけ放ち、さとみ様は胸元のボタンを外していく。


突然の事態に声も出ず。



さとみ様は鎖骨あたりでボタンを外す手を止めると、｢やっぱり｣と一言。




｢……莉犬が付けたんだよな？｣



目線を下に向けるとさとみ様の指が私の鎖骨あたりに付いた赤い華を まるでなにかの確認をするように撫でた。



｢そっ、そうだけど……俺だって我慢したほうなんだから！｣



……ようやく話が見えてきた。



多分、『付き合ってもない奴が 混濁とした意識の女の子押し倒して(勝手に)キスマーク付けるのはどうなん？！』というやつか。


まあ十中八九、彼らが言いたいのはモラル的なそれではなく……



｢____僕も我慢してるのに｣



個人の損得的な。


アイツに負けた！みたいなのが許せないんだろう。

ころん様は不服そうだ。



｢まぁまぁ、落ち着きや。Aが困っとるし｣



ジェル様が目配せしてくれた。


そういう気の使えるところ、嫌いじゃないです。



｢そうだよ。……俺が言いたいことは、するときは鍵を閉めましょう。ということで｣



｢だからなーくん？！言い方！｣




｢あはは｣とななもり様は笑い、莉犬様はげっそりしていた。



｢うそうそ、冗談。莉犬くん、付き合ってない相手に 同意なしでキスマークを付けちゃいけません。しかもお菓子に薬入れたんでしょ？次はないからね｣



ななもり様はまるでお母さんのように、腕を組み 莉犬様を睨む。


……やはり少し勘づいていたが お菓子に薬を入れられていたのか。


すると、莉犬様は耳としっぽをしゅんと垂らして ｢A、ごめん……｣と囁いた。





｢いえ。私はメイドなので｣


｢メイドだからなにしてもいいんですか？｣

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